インプラント治療で保険は使えない?その理由や保険適用の条件を解説
インプラント治療の金額を見て、保険適用で安くならないかと考えた人もいるでしょう。1本分の治療で30~40万円が必要なことを考えれば、少しでも安く済ませる方法はないかを考えるのは仕方のないことです。インプラント治療は、原則保険適用外であり、かかった費用は全額負担する必要があります。しかし、実際には全額負担をするのは一時的な話にすぎないのです。
インプラント治療の保険適用に関するまとめ
- インプラント治療で保険は使えない!
- 「自由診療」にあたるため、治療費用は全て自己負担
- 条件によっては、保険診療が適用される場合あり
- 疾病や負傷の治療(身体の機能を回復する目的のみ)適用可能
- 保険診療でインプラント治療できる歯科医院は限られている
インプラント治療で保険診療が適用される条件4つ
- 先天性疾患により、顎の骨の1/3以上が連続して欠損している
- 先天的な理由で顎の骨が形成不全
- 後天的な理由(病気や事故など)により、顎の骨の1/3以上が連続して欠損している
- 上記の状態から骨移植によって顎の骨が再建された場合
この記事では、インプラント治療での保険の扱いと例外、生命保険や控除関連のお話を解説します。
1.インプラント治療は自由診療
一般的に、病院の受診では国民皆保険制度が適用されるため、医療費の一部を実費負担すればいいようにできています。年齢にもよりますが2~3割負担を求められるので、それほど高額な請求にはなりにくいです。これを「保険診療」と呼びます。
しかし、インプラント治療は「自由診療」と呼ばれる、国民皆保険制度が適用されない処置です。つまり、治療にかかった費用はすべて患者様ご自身で負担していただくことになります。
保険診療が適用される条件は、疾病や負傷の治療が対象で、身体のどこか一部の機能を回復する目的の受診・治療に限ります。インプラント治療の場合は、身体の機能回復よりも審美性向上の意味合いが強いとされているため、保険適用外の自由診療扱いです。
1-1.虫歯治療などは保険診療
歯科医院で多い虫歯治療や歯周病予防などは、保険診療に該当します。失った歯の機能回復や疾病予防が目的のため、保険適用され負担割合が軽減されます。
【保険診療と自由診療の自費負担の割合】
インプラントとよく似た治療で引き合いに出されるブリッジや入れ歯も保険診療です。インプラントと違って、明確に抜けた歯の機能を補完する目的があるため、保険適用になります。
ただし、歯の機能を担う外部構造の材質によっては、保険適用外になることもあります。一般的には樹脂製のものが使われますが、審美性を追求する素材を希望すると保険が適用されず、費用負担です。ただ、歯の機能を補完するだけなら保険適用で、審美性まで追求するなら自由診療になると覚えておきましょう。
1-2.インプラント治療が保険適用外の理由
インプラントには審美性を追求する目的のほか、失った歯の機能を取り戻す目的もあります。にもかかわらず、ブリッジや入れ歯とは別目的にされて保険適用外の自由診療になってしまっています。原因は、治療にかかるコストや時間です。
ブリッジや入れ歯は、挿入する箇所周辺の歯を削ったり、型をとったりして終わるのでコストも時間もそれほど長期間かかりません。外科的な処置もそれほどないため、比較的手軽に治療を済ませることができるのです。
これに対してインプラント治療は、ただインプラントを埋め込めばいいわけではありません。そもそもインプラント治療は外科手術が前提なので、患者様の持病や状態を確認してからしか治療ができないのです。埋め込む際も切開や縫合といった、普通の歯科診療では行わない処置を長期にわたって行うため、保険適用にするのは難しいとする意見が一般的です。
また、歯科医師のインプラント治療の技術習得にもお金がかかっています。常に最新の医療知識を身に着けるために必要なことですが、結果として専門性の高さやコストの関係から、保険診療には該当していないのです。今後、インプラント治療が保険診療になる可能性もありますが、もうしばらく時間がかかると考えておきましょう。
2.インプラント治療が保険適用される条件
原則、自由診療で保険適用外のインプラント治療ですが、特定の条件下で希望される患者様であれば、治療費が保険適用になります。平成24(2012)年4月から適用されたルールです。限定的ではあるものの、歯の機能回復を目的とした患者様に門戸が開かれました。ただし、治療できる病院にも条件があるのでよく理解しておきましょう。
2-1.先天的理由
インプラント治療が保険適用されるケースは、先天的なものと後天的なものの2種類があります。先天的な理由としては、以下の条件が保険適用可能と判断されるものです。
- 先天性疾患で顎の骨の1/3以上が連続して欠損している場合
- 先天的な理由で顎の骨が形成不全な場合
「顎の骨の1/3以上が連続して欠損している」状態は上顎と下顎で共通していますが、それ以外でも適用される条件もあります。
【上顎】
上顎洞もしくは鼻腔まで骨の欠損箇所が続いていると診断されている場合
【下顎】
腫瘍などの病気で下顎を切除している場合
この条件が適用されるのは後天的な理由でも同じですが、顎の骨の状態が関係しています。先天的な理由と認められるためには、歯科医院とは別の病院での照明が必要です。今まで受診した病院に依頼して、診断書を発行してもらいましょう。自己申告では認められないので、事前に主治医にインプラント治療を受ける旨を相談しておくことをおすすめします。
2-2.後天的理由
先天的な理由とほぼ同じにはなりますが、後天的な理由でインプラント治療が保険適用になる場合もあります。詳しい条件は次のとおりです。
- 腫瘍や顎骨骨髄炎などの病気で、顎の骨全体1/3以上が連続して欠損している場合
- 事故などの原因で顎の骨全体1/3以上が連続して欠損している場合
- 上記の状態から骨移植によって顎の骨が再建された場合
先天的な理由と同じく、主治医の診断書が必要です。顎の骨の喪失範囲は先天的な理由の項目でもお伝えしましたが、一定の条件があります。
平成24(2012)年4月から、インプラントは先進医療から除外され、費用の一部が保険適用になりました。これに伴って「インプラント義歯」から「広範囲顎骨支持型装置および広範囲顎骨支持型補綴」と名前が変更されました。今後、インプラント治療全範囲で保険適用になる可能性もありますが、見通しは経っていません。現在は先天的・後天的な理由でのみ保険が適用されることを覚えておきましょう。
2-3.保険診療でインプラント治療できる病院は限られている
一部条件が付いているものの、インプラント治療は保険適用できます。しかし、患者様の条件が揃っているからといって、一般の歯科医院で保険適用によるインプラント治療ができるわけではありません。保険診療によるインプラント治療を受けるためには、治療を病院が以下の4つ条件すべてをクリアしている必要があります。
- 入院用ベッドが20床以上ある病院の歯科または口腔外科で、いずれかに下記条件に該当する歯科医師が常勤で2名以上いる
- 歯科または口腔外科で5年以上の治験経験がある、または3年以上のインプラント治療の治験がある常勤医師が2名以上いる
- 当直体制を整えている病院である
- 国が定める医療機器や医薬品の管理体制が整備されている
上記の条件に該当する病院は、調べてもなかなかわからないことが多いでしょう。もし、保険適用でインプラント治療ができる病院をお探しの場合は、かかりつけやお近くの歯科医院に相談してみましょう。当院でも病院をご紹介できますので、お気軽にお問い合わせください。
3.インプラント治療で生命保険は使えない?
公的な保険制度である国民皆保険制度では、全額自費負担が前提のインプラント治療ですが、生命保険は使えないのか気になった人もいるでしょう。最近では、手術一回につき支払われる「お見舞金」や「手術手当金」と呼ばれるものも増えて決ました。
結論から言うと、インプラント治療で発生した手術代に対して、生命保険の支払い対象にはなりません。「先進医療特約」などを理由に申請する患者様も多いようですが、インプラント治療は「医科診療報酬点数表」と呼ばれる、保険が適用できる手術に該当していません。そのため、生命保険がどのような内容でも、保険金は受け取れないと考えておきましょう。
ただし、国民皆保険制度で保険診療に切り替わる事由でインプラント治療を受けた場合の手術代は、給付金の対象になる場合もあります。病気やけがの治療、先天的な要因のカバーによるインプラント治療のことです。ご契約されている生命保険の内容で異なるので、気になる場合は一度確認しておくことをおすすめします。
4.インプラント治療は医療費控除の対象
かなり高額なインプラント治療の医療費。保険適用される範囲も限定的で、生命保険の給付も原則できないことから、治療をためらってしまう人も少なくありません。しかし、実際にはインプラント治療のために支払った医療費は、年末調整の医療費控除で一部費用が返ってくる可能性があります。
4-1.医療費控除の計算方法
厳密には、返ってくるのは所得税の一部ですが、実質全額負担とはならない可能性があるのです。計算方法は以下の表をご覧ください。
「支払った医療費」および「所得金額」は、納税義務者本人または本人と生計を一緒にしている親族が過去1年間で支払ったり受け取ったりした金額のことです。上記の計算式に数字を当てはめ、医療費が基準額を超えた場合にのみ控除の対象になります。なお、上限は200万円までです。
詳しい申請方法や必要書類については国税庁のホームページで解説されています。インプラント治療でかかった医療費は医療費控除の対象になるので、一度確認してみましょう。
4-2.医療費控除には確定申告が必要
医療費控除するためには確定申告が必要です。申告すると税金の一部が還付されたり、節税になったりします。医療費控除の対象になる費用は、1月~12月の1年間に支払った医療費が10万円以上になった場合です。治療費以外にも通院にかかった交通費や、生計を一つにする家族の医療費も医療費控除の対象となります。同居の家族以外にも単身赴任や進学して一人暮らしをしている家族の医療費も含まれるので、しっかり領収書を保存しておきましょう。
また確定申告は、申告期間が決まっています。毎年2月16日~3月15日の1ヶ月間に前年分の医療費の控除を申告します。医療費を証明する領収書や交通費のメモなど1年分をまとめておきましょう。
申告は、お住まいの地域の税務署に直接持参する以外に、インターネット(e-tax)や郵送でも可能です。インターネット申告(e-tax)は、国税庁のホームページの案内に沿って作成すれば比較的簡単にできます。
4-3.医療費控除に必要な書類
医療費控除に必要な書類は次のとおりです。
- 確定申告書
- 医療費控除の明細書
- 源泉徴収票
- 還付金を振込して
- マイナンバー
- 身分証明書(e-taxの場合は不要)
- 印鑑
もらう口座
以前は、申請時に医療費の領収書を添付してましたが、平成29年以降、医療費控除に関する提出書類が簡略化されました。国税庁が提供している「医療費控除の明細書(集計表)」に医療費を受けた人ごと、病院・薬局ごとにまとめて記入して提出しましょう。「医療費控除の明細書」は国税庁のpdfからダウンロードできます。
明細書にまとめれば、領収書の提出は不要ですが、5年間の自宅保管義務があります。税務署からの求めがあれば、提示・提出しなければいけないので、大切に保存しておきましょう。
5.インプラント治療は費用よりもメリットで選ぶべき
治療費が高額になってしまい、魅力はあっても手が出しにくいインプラント治療ですが、かかる費用や保険適用の有無よりもインプラント治療のメリットで選ぶべきでしょう。一時的に高額な医療費がかかることは間違いありませんし、保険適用される範囲も限られてしまっています。しかし、インプラント治療を受けることで受けられるメリットをよく考えて、治療を受けるかどうかを検討しましょう。
5-1.インプラントのメリット
インプラントのメリットは、次のとおりです。
- 違和感なく、自分の歯と同じように噛むことができる
- 治療のときに周囲の歯を傷つけない
- 見た目がきれいに仕上がる
- 顎の力がしっかり伝わるため、顎の骨が痩せるのを防ぐことができる
上記のメリットは、ブリッジや入れ歯にはない魅力的なものです。使用する機器の金額や医師の研修のための費用のため、保険適用の治療になるにはまだもう少し時間がかかるでしょう。もちろん、こちらの記事で説明しているとおり、費用面以外でのデメリットもあります。しかし、その対価として自分の歯に近い機能を復活させることができます。興味はあるけど悩んでいたり、自分だけでは判断できない方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
5-2.デンタルローンを利用する方法もある
高額なインプラント治療費を削るのは難しいですが、分割払いによって毎月の支払い負担を軽減させることは可能です。すぐに利用できるクレジットローン以外にも歯科治療を対象としたデンタルローンもあります。
利用のためには審査が必要ですが、クレジットローンに比べて金利が低く設定されているのが特徴です。インプラントの治療費に関する分割払いやローンに関しては、当ブログの別記事で詳しく解説しているので参考になさってください。
(参考)「インプラントの治療費でローンは組める?デンタルローンの審査や基準を解説」
(参考))「インプラントの治療費は分割払いできる?ほかの支払い方法も解説します」
6.インプラント治療で大事なのは料金よりも得られる効果
公的にも私的にも保険が使えないことが、インプラント治療を受けるにあたってのネックになっている方もいるでしょう。費用面だけ見れば、ブリッジや入れ歯でいいと思ってしまう人もいます。しかし、インプラント治療は高額な分、得られるメリットは計り知れません。一時的な費用負担は厳しい方も多いでしょうが、長期的に見て自分にとってメリットの方が多いと感じたら、インプラント治療の相談をされることをおすすめします。
※本コラムはあくまで一般的な情報として説明しております。高田歯科ではコラム内容で触れてはおりますがあえて対応していない内容もございますが、ご来院いただく患者様に合わせて最適なインプラント提案をさせていただいておりますので、まずは相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2021年9月7日