インプラントのうわもの(被せ物)とは?種類や費用、取れたときの対処法も紹介
最終的にうわもの(被せ物)を装着することにより、全ての治療が完了するインプラント治療。そのうわものには様々な種類が存在し、素材や見た目、強度、費用などがそれぞれ異なることをご存知でしょうか?
本記事では、そのインプラントのうわもの(被せ物)の種類や費用、選ぶポイントなどについて詳しく解説していきます。
また、インプラントの寿命は10年以上と言われていますが、何らかの原因でうわものが予想より早く取れてしまうことがあるのも事実です。そのような事態になったときの対処法も併せてご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
-この記事でわかること-
- 「うわもの」とはインプラントの構造のうち、歯冠(見える部分)となる上部構造のこと
- うわものには、オールジルコニア・オールセラミック・ジルコニアセラミック・ハイブリッドセラミック・メタルボンド・金属などの種類がある
- 費用相場は種類によって異なるが、5万円~20万円程度(歯科医院によっても異なる)
- うわものを選ぶポイントは3つ! ①見た目 ②強度 ③費用
- 破損したうわものを交換しないリスクや、とれた場合の対処法もご紹介
インプラントのうわもの(被せ物)とは
通常のインプラントは、
- インプラント体(歯根)
- アバットメント(インプラント体と上部構造をつなぐ土台)
- 上部構造(被せ物)
の3部構造で成り立っています。うわものとはこのうち、歯冠(見える部分)となる上部構造のことを指します。
うわものに使用される素材は複数あり、基本的にお口の状態に最適なうわものが選ばれますが、次に説明するうわものの種類や費用をあらかじめ理解しておくことで、納得のいく選択をすることができるでしょう。
インプラントのうわもの(被せ物)の種類とその費用
インプラントのうわもの(被せ物)には様々な種類が存在し、取り扱っているメーカーや素材、費用は歯科医院によって異なります。それぞれメリットやデメリットもあるため、被せる部位や口腔内の状態によってどれが自分に最適なものなのかを比較することが大切です。
ここから、うわものの種類別に特徴をご紹介していきますので、判断材料の一つとして参考にしてみてください。
オールジルコニア
オールジルコニアは人工のダイヤモンドと言われるほど硬く、強度に優れているのが特徴のセラミック素材です。強度がかなりあるため、割れる心配が少なく、噛み砕いたり、すり潰したりする役割のある奥歯に最適。
また、白い素材で変色もしないため見た目も目立たず、歯茎との境目も自然仕上がります。しかし、他のセラミック素材と比べると審美性が少し劣ることや費用が高額になるのがデメリットとして挙げられます。(費用相場:10万~20万円程度)
オールセラミック
オールセラミックは天然歯に一番近いツヤと透明感があり、審美性に優れている100%セラミック(陶器)の素材です。そのため見た目を重視される方や前歯に入れる方に適しているでしょう。
また、金属を一切使用していないため、金属アレルギーや長年の使用による変色などの心配がないのが魅力です。
しかし、ジルコニアと比べて強度が劣るため、硬い物を噛む、歯ぎしりや食いしばりなどの強い負荷がかかると割れるリスクがあります。(費用相場:7万~17万円程度)
ジルコニアセラミック
ジルコニアセラミックは、人工歯の内側がジルコニアで作られ、表面にセラミックを焼き付けた被せ物です。強度に優れたジルコニアと審美性に優れたセラミックを掛け合わせることで、それぞれの良い性質を兼ね備えております。
金属アレルギーや変色の心配がないことはメリットですが、他の素材と比べると費用がかかる場合もあります。(費用相場:10万~20万円程度)
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックは、セラミックとレジン(歯科用プラスチック素材)を混ぜ合わせた素材です。セラミックによるツヤや透明感を作り出しつつも、レジンを使用することによって費用を抑えることができるのがメリットの一つです。
しかし、レジンは柔らかい素材で吸水性もあるため強度が弱く、長年使用することでの変色が目立ってきてしまうのがデメリットと言えるでしょう。また、見た目もオールセラミックと比べると劣ってしまいます。(費用相場:5万~12万円程度)
メタルボンド
メタルボンドは、人工歯の内側が金属で作られ、表面にセラミックを焼き付けた被せ物です。金属を使用することで強度が高くなるのが最大の特徴。
一方で「金属アレルギーの方は使用できない」「オールセラミックと比べて透明感が劣る」「経年劣化や歯茎が下がることで金属部分が露出してしまう」「金属イオンが溶け出すことで歯茎に着色する」などの懸念点もあります。(費用相場:7万~13万円程度)
金属
全て金属で作られた被せ物で、強度が高いうえに適度な柔らかさを持つため、割れにくく適合性もあります。また、使用する金属によっても異なりますが、被せ物の中でも費用を抑えることができる素材です。
しかし、見た目が目立つため前歯にはおすすめできません。また、金属を使用しているため、アレルギーをお持ちの方は使うのが難しいでしょう。(費用相場:7万~12万円程度)
インプラントのうわもの(被せ物)を選ぶポイント
これまでインプラントのうわものの種類と費用をお伝えしてきましたが、そのうわものを選ぶポイントは大きく分けて3つあります。
下記の3つのポイントを押さえつつ、歯科医師と相談しながら自分に最適なうわものを選びましょう。
ポイント①見た目
笑ったり、話したりするときに見える箇所にインプラントを入れる場合、見た目は重要な要素となります。
特に歯は、その人の印象を決める大切な部分でもあります。そのため、審美性を重視される方や前歯にインプラントを入れる場合は、天然歯に近いツヤや透明感のある素材を選ぶことがおすすめです。
また、素材によっては見た目が優れていても、経年劣化により変色する場合もあるため、長い目でみたときにどうなるかというところまで視野に入れて決めると良いでしょう。
ポイント②強度
たとえ見た目が完璧でも、自分の口腔内の状態にそぐわない強度のうわものを選んでしまっては破損するリスクが高まってしまいます。
歯並びや噛み合わせ、噛み癖などによってインプラントや他の歯にかかる力は人それぞれ異なります。そのため、自分にはどれくらいの強度が必要なのかを歯科医師と相談しながら、見た目・強度ともに最適なものを選ぶようにしましょう。
ポイント③費用
インプラント治療の費用には検査やインプラント体、手術、うわもの(上部構造)などが含まれており、歯科医院によってかかる費用はそれぞれ異なります。
そのため、うわものだけの費用で判断するのではなく、インプラント治療にかかる総額を確認しましょう。
【部位別】インプラントのうわもの(被せ物)の選び方
インプラントのうわもの(被せ物)は、どの部位に被せるかによっても選び方が異なります。ここでは、「前歯」と「奥歯」それぞれに適したうわものの種類をご紹介します。
【前歯】におすすめのうわものの種類
前歯は人からもよく見える部分のため、「審美性」を重視したうわものを選ぶことがおすすめです。そのため、天然歯のツヤや透明感に近いオールセラミックやオールジルコニア、ハイブリッドセラミックが適しています。
なお、ハイブリッドセラミックは歯科用プラスチックを混合して作られているため、他の2種類と比べて費用が抑えられますが、経年劣化があることを頭に置いておきましょう。
【奥歯】におすすめのうわものの種類
奥歯は噛み砕いたり、すり潰したりする役割を担っているため、「強度」を重視する必要があります。そのため奥歯のうわものには、耐久性に優れているオールセラミック、オールジルコニア、メタルボンド、金属がおすすめです。
ただし、噛み合わせや見た目、歯ぎしりや食いしばりの癖なども種類を判断する重要な要素となるため、歯科医師と相談したうえで総合的に判断しましょう。
インプラントのうわもの(被せ物)を長持ちさせる方法
インプラントの寿命は10年~15年程度が平均と言われており、歯を失った場合の治療法の中で最も長持ちするのが特徴です。
ただし、うわもの(被せ物)を長持ちさせるためには、いくつか気をつけておかなければならないポイントがあります。ここからは、インプラントのうわものを長持ちさせる方法をご紹介していきます。
定期的に検診・メンテナンスを受ける
インプラントは入れたら終わりではなく、その後のケア次第でインプラントの状態は大きく変わるため、定期的にメンテナンスに通うことが重要です。メンテナンスでは、歯科衛生士によるクリーニングを行い、ご自宅のケアでは取り除けない汚れまでしっかり取り除くことができます。
また、定期検診ではインプラントに不具合がないか、噛み合わせや歯茎に問題がないかといった確認の目的もあります。インプラントに何か問題があった場合には、早期に対処ができるため、必ず定期的に歯科医院へ通いましょう。
適切なセルフケアを行う
ご自宅での丁寧なケアは毎日欠かせません。インプラントのうわものはその性質上虫歯になることはありませんが、セルフケアを怠ってしまうとインプラント周囲炎になる可能性が高くなります。
インプラント周囲炎は、歯垢や歯石などの汚れが原因で発症してしまう歯周病です。進行してしまうと最終的にはインプラントが脱落してしまうことにもなりかねないため、日頃からフロスや歯間ブラシなどを活用しながら、念入りな歯磨きを心がけましょう。
噛み癖対策を行う
日頃から片側で噛む癖があったり、硬い物を好んで食べたりする方もいるでしょう。そのような場合、日常的にインプラントに過度な負荷がかかり、うわものの破損やインプラントの不具合が起きるリスクが高まります。
そのため、食事の際は左右の歯でバランス良く噛むことを意識し、硬い物を食べる際はインプラント部分で噛まないように注意しましょう。
マウスピースやナイトガードを使用する
歯ぎしりや食いしばりは想像以上に強い力が加わるため、インプラントの被せ物が破損してしまうことがあります。そこでマウスピースやナイトガードの使用がおすすめです。
これらを装着することで歯を守ると同時に、歯にかかる力を分散してくれるため、顎への負担も軽減できます。
歯ぎしりや食いしばりは無意識で行っていることも多く、自分では気付きにくいため、口腔内の状態などを見ながら歯科医師と相談したうえで検討しましょう。
インプラントのうわものの交換が必要なケースと交換しないリスク
インプラントの寿命を待たずして、状態によってはうわものの交換が必要なケースがあります。さらに交換をしないまま放置してしまうと口腔内のトラブルを招いてしまう可能性も高まってしまうでしょう。
次の項目ではどのような場合に交換が必要になるのか、また、不具合のあるうわものを交換しないリスクについて解説します。
「破損」した場合は交換が必要
交換が必要な主なケースは、うわものが破損した場合です。うわもの(上部構造)は強度が高いと言われていますが、寿命を迎えたり、過度な負荷がかかったりすることで破損してしまうことがあります。
破損したまま放置してしまうと、あらゆるトラブルを引き起こしてしまうため、早めに歯科医院を受診しましょう。なお、破損したうわものを交換しないリスクは以下の2つです。
リスク①全体の歯列・噛み合わせが変わる
うわものが破損したまま放置していると、上手く噛み合わなくなり、本来の正しい噛み合わせが崩れてしまいます。その影響で他の歯や顎にも負担がかかるほか、全体的な歯列が変わってしまう可能性もあるのです。
リスク②インプラント周囲炎が悪化する
うわものが破損したままでいると、その部分や周囲に汚れが溜まりやすくなることで、細菌感染を起こしてしまうリスクが高まります。それが「インプラント周囲炎」です。
インプラント周囲炎は、インプラントの周囲組織に炎症が起き、顎の骨を溶かしてしまう歯周病の一つ。症状が悪化するとうわものだけではなく、インプラント体へも悪影響を及ぼし、最終的にはインプラントが脱落してしまう可能性があります。
インプラントのうわもの(被せ物)が取れたときの対処法
できるだけ長く保てるのが一番ですが、ここからは、万が一インプラントのうわものが取れてしまった場合、どのような対処をするべきなのかを見ていきます。
落ち着いた判断ができるよう、今のうちから下記の3つを覚えておいてください。
うわもの(被せ物)は捨てずに保管する
インプラントのうわものが取れてしまったら、洗浄せずに綺麗な容器などに保管しておきましょう。洗浄しない理由としては、インプラントのうわものは小さいため、排水口に落としてしまう可能性があるからです。
また、変形やさらなる破損を防ぐためにも、ある程度しっかりとした硬さのある容器を活用するのがおすすめです。
かかりつけの歯科医院に連絡・受診する
インプラントのうわものの保管をしたら、次はかかりつけの歯科医院に連絡し、取れた時の状況を詳しく伝えましょう。
受診するまでに期間が空いてしまう場合は、あらゆるトラブルを防ぐためにも、受診までの気をつけるべきポイントなどを確認しておくと安心です。
うわものが取れた部位に負担をかけないようにする
取れた部位は特に気になると思いますが、歯科医院に受診するまでの間はうわものが取れた部位に負担をかけないようにしましょう。
過度な力が加わりやすい硬い食べ物は避け、必要以上に触ることも控えるようにしてください。
自分に合ったうわもの(被せ物)を選んで長持ちさせましょう!
うわもの(被せ物)には様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。インプラントを入れる箇所や口腔内の状態・癖などによって最適な素材が異なるため、自分の希望と併せて歯科医師としっかり相談して選択しましょう。
また、インプラントの寿命は10年~15年と長いことが魅力の一つですが、場合によっては破損や取れてしまう場合も起こり得るかもしれません。そうならないためにも、日頃から定期的なメンテナンスやセルフケアを心がけ、もしトラブルが起きた際は焦らず今回ご紹介した対処法を実践しましょう。
インプラント治療をご検討の方やインプラントのうわもの(被せ物)について気になることがある方は、「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」へお気軽にご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2024年11月5日