インプラント治療は高額療養費制度の対象外?保険適用や医療費控除も解説
失った歯を取り戻す治療の中でも、審美性や耐久性に優れているという理由から、インプラント治療は年代を問わず高い人気を誇ります。
しかし、インプラントは費用が高額であるため、なかなか治療を受ける決心がつかずにお悩みの方、少しでも安くインプラント治療を受けられないかと考えている方も多いでしょう。
そこで本記事では、費用を抑えられる可能性のある高額療養費制度や医療費控除について、また、保険が適用される条件や医療費控除の申請方法について解説します。
▼この記事で分かること
- インプラント治療は基本的に「高額療養費制度」の対象外
- 高額療養費制度の対象外の理由は、保険が適用されないから
- インプラント治療に保険が適用できる主なケースが分かる
- インプラント治療で経済的負担を軽減するには「医療費控除」を活用
- 医療費控除の申請方法や所得別の医療費控除額が分かる
なるべく費用を抑えてインプラント治療を受けたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
【結論】インプラント治療は高額療養費制度の対象にならないケースがほとんど
インプラント治療は基本的に、高額療養費制度の対象外となります。
高額療養費制度は「保険適用の医療費」が対象となるため、インプラント治療などの自由診療の費用は適用されないのです。
高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、毎月1日から月末までの1か月間でかかった医療費の自己負担限度額が高額になった場合に、限度額を超えた金額が払い戻される制度のことです。
高額療養費制度は「保険適用の医療費(=保険診療)」のみが対象となります。
また、高額療養費はご自身が加入している健康保険組合へ申請することで、保険適用の医療費が還付されます。なお、自己負担上限額は、年齢や所得によって異なります。
インプラント治療が高額療養費制度の対象外の理由は「保険が適用されないから」
インプラント治療は非常に高額であるため、高額療養費制度の対象額に十分該当するのではないかと考える方も多いでしょう。しかし、高額療養費制度には「保険診療であること」という決まりがあります。
インプラント治療は基本的に、歯を失った際の治療であると同時に、入れ歯やブリッジよりも審美性を求める治療であることから、「審美性を求める処置」と位置づけられます。
治療が必要となる疾病や負傷などにおける症状・病状に対する治療とはみなされないことから、インプラント治療の費用は、ほとんどのケースで自由診療となるのです。
したがって、インプラント治療は高額療養費制度の対象外となります。ただし、のちほど説明しますが、特定のケースにおいては、インプラント治療が保険適用となり、高額療養費制度を利用することができます。
「自由(自費)診療」と「保険診療」について
ここでは、自由診療と保険診療について説明します。適用条件や費用の負担割合などを押さえておきましょう。
自由診療
自由診療とは、健康保険が適用されず、治療費を「全額自己負担」しなければならない診療を指します。患者様の収入や年齢に関係なく、請求された金額は全額支払う必要があります。
歯科医院での自費診療に該当する治療は、インプラントや歯列矯正、ホワイトニングなど、審美性を向上させることを目的とした、病気の治療ではない治療が該当します。
したがって、本記事で着目しているインプラント治療は、基本的にこの自由診療に該当し、保険は適用されません。
保険診療
一般的な診療や治療で適用されるのが、保険診療です。保険診療に該当すれば、かかった医療費の30%のみが自己負担分となり、残りの70%は国のお金で賄われます。
日本では全国民が国民健康保険や社会保険など、何らかの健康保険に加入しなければならないとされています。
自費診療は全く同じ処置でも歯科医院によって金額が異なりますが、保険診療はどの歯科医院でも一律の費用で受けられるのが特徴です。
歯科医院での保険診療に該当する治療は、むし歯や歯周病などの治療や抜歯、削った歯への詰め物・被せ物などが挙げられます。失った歯を補う治療においては、入れ歯やブリッジなどが代表例です。
インプラント治療に保険が適用できる主なケース
前述した通り、通常のインプラント治療には、保険は適用されません。しかし、以下のようなケースは保険適用条件に該当します。
先天性の病気を患っている場合
インプラント治療が保険の適用対象となる1つ目のケースが、先天性の病気を患っていることが原因で必要となるインプラント治療の場合です。
具体的には、
- 生まれつき、あごの骨が1/3以上連続して無い
- 先天的にあごの骨が形成不全であると診断された
といった場合は、インプラント治療の費用は保険適用対象となります。
病気や事故の影響がある
保険適用される2つ目のケースは、何らかの病気にかかったり、事故に遭ったりしてその影響でインプラント治療が必要となった場合です。
- 病気や事故の外傷などの原因で1/3以上連続して、顎の骨を失ってしまった場合
- ブリッジや入れ歯などの治療では咀嚼機能の回復が難しいと診断された場合
このような場合はインプラントの治療費用が保険適用対象となります。
もし、上記2つのケースに該当し、費用が保険適用対象となるインプラント治療であれば、高額療養費制度が利用できます。
ただし、保険適用の症例であることに加え、次に紹介する「歯科医院の施設基準」の条件もクリアしなければなりません。
保険適用には保険医療機関の条件も満たさなければならない
上述したケースに該当かつ、以下の条件を満たす施設で治療を受けることで、インプラント治療に保険が適用されます。
- 歯科口腔外科あるいは歯科を診療科目に設けている施設であること
- 入院用のベットが20床以上あること
- 当直体制が整備されている
- 医薬品や医療機器等の安全を確保するための体制が整っていること
- 歯科口腔外科または歯科として5年以上稼働していること(または、インプラント治療の経験が3年以上ある医師が常勤で2名以上配置されていること)
これらの条件を満たしていなければ、いくら2つのケースに該当していても保険適用を受けることはできません。少しでも負担を抑えられるよう、施設は慎重に選びましょう。
インプラントに保険が適用されないケース
反対に、以下のような理由で歯を失った場合は、インプラント治療を受けても保険が適用されません。
- むし歯
- 歯周病
- 加齢によるもの
- 見た目や機能の改善が目的の場合
経済的負担を軽減できる「医療費控除」
インプラント治療は基本的に、保険適用、高額療養費制度の対象にならないことは分かっていただけたと思います。
ただ、費用が保険適用対象外となることが多いインプラントでも、費用を抑える方法はあります。それが「医療費控除」です。ここから医療費控除について詳しく解説していきます。
医療費控除とは
医療費控除とは、年間(1月1日~12月31日まで)の医療費が10万円を超えた場合、税金の減免(所得控除)を受けることができるという制度です。
高額療養費制度のように多くの還付を受けることはできませんが、医療費はもちろん医薬品の購入にかかった費用や通院のための交通費(電車やバス代)など、医療に関わる広い範囲の費用が控除対象に含まれています。
また、1人暮らしで住居が別の場合や、共稼ぎで妻か夫どちらかが扶養控除から外れている場合でも、生計が同じであれば医療費を合算することができます。
インプラント治療には医療費控除を活用しましょう!
医療費控除は、インプラント治療などの自由診療も対象となるため、申告すれば費用の一部が還付されます。ただし、インプラント治療でも、歯の色や歯並びといった審美性を高めることや健康維持を目的とした診療は対象外となります。
インプラントの本数や症例によっては、かなりの控除額が期待できます。高額なインプラント費用の負担を少しでも軽くするためにも、この制度を使わない手はありません。
ただし、医療費控除は申請が必要です。医療費控除の対象であっても、申請を行わなければ還付されないのでご注意ください。
インプラントの医療費控除の申請について
医療費控除を受けるには、確定申告を行う必要があります。年末調整だけでは医療費控除を受けることはできません。
具体的に医療費控除の申請方法や必要書類などについてみていきましょう。
インプラントの医療費控除の申請期間や方法(e-taxなど)
医療費控除の申請は「確定申告」で行います。確定申告書の提出期限は、毎年2月16日から3月15日までの1ヶ月間です。
医療費控除は以下のいずれかの方法で申請しましょう。
- 自宅で書類を作成し、自分の住所の所轄税務署に持参・郵送する
- 必要書類をそろえて自分の住所の所轄税務署で作成する
- 国税電子申告・納税システム「e-Tax」でインターネットを通じて申告する(要事前登録)
なお、国税庁が運営するWEBサイト「確定申告書等作成コーナー」なら、画面の案内に従って必要情報を入力するだけで、自動的に税額などを計算することができます。
作成した書類をプリントアウトして税務署へ郵送・持参できるほか、e-Tax経由でオンライン送信することも可能です。
また、医療費控除は5年前までさかのぼって申告が可能です。万が一申告忘れがあっても次回の確定申告で対応できます。
医療費控除の申請に必要な書類
医療費控除を受けるためには、必ず以下の書類を用意する必要があります。
- 医療費控除の明細書
- 医療通知書(加入している保険組合から送られてくる「医療費控除のお知らせ」)
- 確定申告書
- 本人確認書類
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 各種領収書(治療費・医薬品の代金・公共交通機関やタクシーの領収書)
- 医療費の領収書(※)
※2017年分の確定申告から、医療費控除には領収書の提出が不要となり、その代わりに「医療費控除の明細書」を提出する方法に変更されました。
基本的には、加入している保険組合から送られてくる「医療費控除のお知らせ」を「医療費控除の明細書」に添付するだけで問題ありません。ただし、医療費控除のお知らせにはあくまでも「保険診療分のみ」が記載されています。
自由診療であるインプラント治療は記載されていないため、別途「医療保険控除の明細書」へ必要事項を記入する必要があります。
医療費控除の申請におけるポイントや注意点
ここからは、医療費控除の申請におけるポイントや注意点を説明していきます。
インプラントの費用がローンや分割でも対象になる
インプラント費用がローンや分割払いでも医療費控除の対象になることは知っておいて損はありません。ただし、金利や手数料は控除の対象外となるので注意しましょう。
なお、分割払いの場合、医療費控除の申請ができるのはその年に支払った額に限られます。
会社員の場合も申請は自分で行う必要あり
自営業や個人事業主の方は、毎年確定申告を行うタイミングで医療費控除の申告を行うことができます。一方、会社員の場合、会社で年末に年末調整を行っているため安心してしまう方も多いと思います。
しかし、医療費控除は年末調整の対象外。そのため、医療費控除を受けるには自ら申告をする必要があります。忘れずに申請しましょう。
領収書は最低5年間保管しておく
治療を受けた際、明細書と領収書(もしくはどちらか一方)が発行されますが、5年間は手元でしっかり保管しましょう。
前述した通り、2017年から医療費控除の申請で領収書の提出が不要となりましたが、インプラントを含めた自由診療の場合は、「医療費のお知らせ」に記載されません。医療費控除を受けるために領収書の提出が必要となる場合があるため、必ず保管しておいてください。
医療費控除対象額を求める計算式
医療費控除対象額は、以下の式で求めることができます。
医療費控除対象額=支払った医療費の合計-保険金などの補填金(※1)-10 万円または所得金額の5%(※2)
(※1):保険金などの補填金とは、健康保険や生命保険から支給される保険金・給付金のことです。
(※2):総所得の金額が200万円未満は、所得金額の5%
控除額(還付金)を求める計算式
控除額(還付金)の目安は、以下の式で求められます。
控除額(還付金) = 医療費控除額 × 所得税率
医療費控除対象額に、所得に応じた税率をかけた金額が医療費控除の還付金です。所得が多い方が還付金も多くなります。なお、控除額の上限は200万円です。
減額される住民税の計算式
医療費控除を行うと、対象となる金額に応じて翌年の住民税も減額されるという優遇措置を受けることができます。減額される住民税の計算式は以下の通りです。
減額される住民税 = 医療費控除対象金額 × 10%
なお、住民税の場合は、所得に関係なく還付される割合は一律10%と定められています。
インプラントの医療費控除額の計算方法例
実際にどのくらいの金額が還付されるのか、計算例を所得金額別にみていきましょう。
例として、
- インプラント治療にかかった費用が50万円だった場合
- 補填金がなかった場合
を想定しています。
※医療費控除額や還付金額は、所得額や家族構成、保険金によっても異なるため、あくまで目安として参考にしてください。
また、所得金額によって変わる税率は以下の通りです。
所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 ~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
【計算例①】所得金額200万円以下(180万円)のケース
- 所得金額が180万円の方の場合の還付金は【2万500円】
- 翌年に減額される住民税は【4万1000円】
内訳:
支払った医療費の合計50万円-保険金などの補填金0円 - 年収200万円以下のため所得金額の5% 9万円 = 医療費控除対象額は41万円
医療費控除額41万円 × 所得が180万円(200万円以下)の方の所得税率5% = 還付金は2万500円
医療費控除対象金額41万円 × 一律10% = 減額される住民税は4万1000円
【計算例②】所得金額500万円のケース
- 所得金額が500万円の方の場合の還付金は【8万円】
- 翌年に減額される住民税は【4万円】
内訳:
支払った医療費の合計50万円-保険金などの補填金0円 - 10万円 = 医療費控除対象額は40万円
医療費控除額40万円 × 所得が500万円の方の所得税率20% = 還付金は8万円
医療費控除対象金額40万円 × 一律10% = 減額される住民税は4万円
【計算例③】所得金額1,000万円のケース
- 所得金額が1,000万円の方の場合の還付金は【13万円2000円】
- 翌年に減額される住民税は【4万円】
内訳:
支払った医療費の合計50万円-保険金などの補填金0円 - 10万円 = 医療費控除対象額は40万円
医療費控除額40万円 × 所得が1,000万円の方の所得税率33% = 還付金は13万円2000円
医療費控除対象金額40万円 × 一律10% = 減額される住民税は4万円
インプラント治療は基本的に高額療養費の対象外!医療費控除を活用しましょう!
インプラントは自費診療扱いになるため、どうしても高額で患者様の負担が大きくなりやすいものです。基本的に高額療養費制度の対象外とはなりますが、治療目的によるインプラント治療にかかる費用を抑えたい場合には、医療費控除の申請を行い、負担を軽減しましょう。
なお、インプラント治療は高額なだけに、失敗しない歯科医院選びも重要です。当院「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」は、インプラントの年間症例数850本の実績があります。
また、一時的な治療だけでなく、インプラントの長期耐用を実現することで、長い目で見た経済負担軽減、また将来的なお口の健康維持を目指しています。
院長の高田自ら「インプラントの無料相談」を行っておりますので、インプラントに関する不安や疑問をお持ちの方や、治療を迷っている方など、どんな方でもぜひお気軽にご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2024年4月10日