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院長 高田 徹

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インプラントが「向いているケース」や「できない・向いていないケース」を解説

失った歯を補うための治療法の一つであるインプラント。入れ歯やブリッジと比べて審美性や機能性に優れているため、近年ではインプラント治療を選択される方も増えてきました。

ただ、インプラント治療は外科手術を伴うため、希望したとしても誰でも受けられるとは限りません。そこで今回は、インプラントが「向いているケース」や「できない・向いていないケース」についてそれぞれ解説いたします。

また、適応できない場合の対処法などについてもご紹介していくため、インプラントを検討されている方はぜひ参考にしてください。

-インプラントが向いているケース(人)-
  • 奥歯(第一大臼歯)を失ったケース
  • 入れ歯が合わない、もしくは入れられないケース
  • 失った歯の両隣が問題ない健康な歯であるケース
  • 自分の歯がたくさんある人
  • 外傷や事故で歯を失ったケース
-インプラントができない・向いていないケース(人)-
  • 骨が少ない・薄いケース
  • 年齢が若い(主に未成年)
  • 虫歯や歯周病がある人
  • 歯並びが悪い人
  • 糖尿病を患っている・透析を受けている人
  • 健康に不安がある人
  • 妊娠している人
  • 喫煙習慣がある人
  • デンタルケアが不十分なケース

インプラント治療が向いているケース(人)

インプラントはたとえ人工歯であっても、天然歯とほとんど変わらない見た目や噛み心地であること、そしてインプラント単体で治療が叶うことから、下記のような方がインプラント治療に向いていると言えます。

奥歯(第一大臼歯)を失ったケース

歯を失った場合の治療法として、ブリッジ・入れ歯・インプラントが挙げられるのですが、ブリッジは両隣の歯を土台として使用する治療のため、第一大臼歯を失った場合はブリッジを選択することはできません。

それが理由で入れ歯を選択される方が多いのですが、入れ歯は天然歯と比べて噛む力が弱く、違和感を強く感じてしまいます。さらに、バネをかける他の歯の負担も大きいものです。

奥歯は食事の際にかみ砕いたり、すり潰す重要な役割を担っている部分でもあるからこそ、単独での治療ができ、天然歯とほとんど変わらない噛む力を持つインプラントが適しています。

入れ歯が合わない、もしくは入れられないケース

入れ歯は見た目が目立つ、装着したときの違和感がある、噛む力が弱く食事がしづらい、会話をしているとズレるなどのデメリットが挙げられます。

そのため、日常生活においてストレスを感じられる方も多く、自分に合う入れ歯に作り替えた、結果的に入れ歯をしなくなってしまったというケースも少なくありません。

一方、インプラントは審美性や機能性に優れていることはもちろん、天然歯とほとんど変わらない噛み心地・使い心地のため、快適に日々を過ごすことができるようになります。

失った歯の両隣が問題ない健康な歯であるケース

ブリッジの場合、両隣の歯を土台として使用するため、たとえ健康な歯であっても削る必要があります。また入れ歯も同様、バネをかける部分を削る必要があり、さらにはバネをかけることによって負担がかかり、健康な歯の寿命を縮めてしまうことにもつながります。

一方インプラントは両隣の歯を傷つけることなく、歯を失った部分だけの治療で終わらせられるため、両隣の歯が健康な歯の場合はインプラント治療が有効と言えるでしょう。

自分の歯がたくさんある人

前述したように入れ歯やブリッジの場合、他の歯を土台や引っかけるために使うため、健康な歯であっても削る必要があります。

そのため、自分の歯がたくさんある人は、他の歯を傷つけることのないインプラント治療がおすすめです。

外傷や事故で歯を失ったケース

スポーツや不慮の事故などで歯を失ってしまうケースとして多いのが前歯です。前歯は見た目に関わる大事な箇所だからこそ、審美性に優れているインプラントがおすすめ。

また、外傷や事故の直後であればインプラント埋入に必要な骨の量が十分に残っていることが多く、周りの歯を削ることもないため有効な治療法だと言えるでしょう。

インプラント治療ができない・向いていないケース(人)

次に、インプラント治療ができない・向いていないケースについて解説します。

骨が少ない・薄いケース

インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込む治療です。そのため、インプラント治療を受けられる条件として「骨の量が十分にあること」が挙げられます。

顎の骨が少ない・薄い場合、インプラント体(人工歯根)を埋め込んだとしても安定させることができず、治療が失敗に終わってしまうケースもあるのです。

たとえ治療が成功したとしても、時間が経ってからインプラントがグラついてきたり、抜け落ちたりしてしまうリスクが高まってしまいます。

骨が少ない・薄い場合、インプラント治療ができないというわけではないものの、インプラント治療の前段階として「骨造成(骨を増やす処置)」を追加手術として行う場合がほとんどです。

年齢が若い(主に未成年)

インプラント治療は、顎の骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込む外科手術を伴います。

人によって成長スピードは異なりますが、年齢が若い(主に未成年)場合まだ顎の骨が成長途中であることがほとんど。その中でインプラント治療を行うことで不具合が起きやすくなるのです。というのも、一度入れたインプラントは顎の成長に伴って動いたり変化することはできないためです。

そのため、年齢が若いときに歯を失ってしまった場合、顎の成長が止まるまでは一時的に入れ歯など別の方法で過ごすことをおすすめする歯科医院が多いでしょう。そして時期をみて、インプラント治療を検討することが重要です。

虫歯や歯周病がある人

インプラント治療は、歯茎を切開したり、顎の骨に穴を開けたりといった外科手術を伴うため、虫歯や歯周病がある場合には手術の際に細菌感染を引き起こすリスクが高まります。

細菌感染を起こしてしまうと、傷口の治りが悪くなったり、インプラント体と顎の骨の結合が上手くいかずインプラント治療が失敗に終わってしまったりするケースもあります。

さらには、インプラント治療後に歯周病菌が原因で「インプラント周囲炎」になる場合もあるのです。

そのため、歯科医院ではインプラントの治療前は虫歯や歯周病の有無をチェックし、必要な場合は先に治療を済ませ、感染の危険性をなくしたうえでインプラント治療を開始します。

歯並びが悪い人

歯並びが悪い場合、インプラントを適切な位置に埋入することができず治療ができないケースがあります。また、埋入ができたとしても噛み合わせに不具合が起き、せっかく入れたインプラントの破損や人工歯根の脱落につながることもあるでしょう。

さらに、埋入する箇所によっては清掃が上手く行き届かず、細菌感染が起き「インプラント周囲炎」を引き起こすリスクも高くなります。

そのため、まずは歯並びを整えることでそのリスクを減らし、さらには適切な位置にインプラントを埋入することを考え、矯正を提案されることがあるでしょう。

関連記事:インプラントで歯並びが悪いのは変わるのか?矯正治療(歯列矯正)との違いも解説

糖尿病を患っている・透析を受けている人

糖尿病を患わっている方は、免疫力や抵抗力が弱まっていることが多いため、インプラント治療が難しいと判断されるケースがあります。

というのも、インプラント治療は外科手術を伴うため、免疫力や抵抗力が低下していることにより傷口や骨の回復が遅れ、細菌感染を起こす、インプラント体と骨の結合が上手くできないという可能性が高まるからです。

さらに、腎疾患により人工透析を受けている方もインプラント手術によって細菌が臓器に回ってしまうリスクがあるためおすすめできません。

糖尿病や腎疾患に限らず、全身疾患をお持ちの方は、インプラント手術においてのリスクが考えられるため、必ず既往歴や治療中の疾患について申告し、歯科医院・かかりつけ医に相談しましょう。

健康に不安がある人

前述した通り、全身疾患をお持ちの方や健康状態に不安がある方は、外科手術を伴うインプラント治療を行うことが難しい場合があります。

糖尿病や腎疾患の他、高血圧、心疾患、肝臓病、骨粗しょう症などが挙げられ、これらはインプラント手術時や手術後の感染症や傷口や骨の回復を妨げる要因となり、インプラント治療が失敗に終わるケースが考えられます。

ただし、全身疾患の内容や健康状態によっては治療が可能な場合もあるため、まずは歯科医院やかかりつけ医に相談しましょう。

妊娠している人

妊娠中のインプラント治療は絶対にできないというわけではありませんが、様々なリスクや負担を考えるとおすすめできません。というのもインプラント治療は外科手術を伴い、治療期間も長いため、精神的・身体的負担が大きくなりやすいからです。

また、投薬やレントゲン撮影などもあるため不安に感じられる方も多いでしょう。そのため、どうしても急ぎでインプラント治療を受けたいと希望されている方以外は、出産後に治療を受けることをおすすめします。

まずは妊娠していることを歯科医院に伝え、インプラント治療について相談してみましょう。

関連記事:母子双方の安全のために知っておきたい妊娠中のインプラント治療(手術)のリスク

喫煙習慣がある人

タバコに含まれるニコチンには、血流悪化や免疫力低下といった懸念があります。インプラント治療は顎の骨にインプラント体を埋め込み、骨とインプラントが結合することで安定性を保っています。

しかし、血流が悪くなることでこの骨とインプラント体の結合が上手くできず、インプラント治療が失敗に終わってしまうことも。さらに、免疫力が低下すると、細菌感染が起きるリスクが高まり、傷口の治りが悪くなったり、治療後にインプラント周囲炎になってしまったりする場合があります。

そのため、インプラント治療を受ける場合は禁煙を推奨している歯科医院がほとんどです。非喫煙者と比べて喫煙者はリスクが高まることを理解し、禁煙もしくは本数を減らすことを心掛けましょう。

デンタルケアが不十分なケース

普段から自宅での歯磨きやデンタルケアが不十分の場合、口腔内の衛生管理ができないと判断され、インプラント治療をおすすめされないケースがあります。

その理由は、口腔内の衛生面が保てていなければ、お口の中の細菌が増え、インプラント周囲炎のリスクが高まるからです。さらに、他の歯にまで虫歯や歯周病といった悪影響を及ぼす場合もあります。

最悪の場合は、インプラントがグラグラしたり、脱落したりする危険性もあるため、治療後のデンタルケアは必須と言えるでしょう。

【一覧表】インプラントができないケース別の対処法

これまでインプラント治療ができないそれぞれのケースについてお伝えしてきました。ただし、それに当てはまるからといって必ずしもインプラント治療ができないというわけではありません。

口腔内の状態にあった対処を行うことで、インプラント治療が可能になる場合もあるため、下記の一覧表を参考に検討してみてください。

インプラントができない・
向いていないケース
対処法
骨が少ない・薄いケース インプラント治療前もしくはインプラント手術と同日に骨造成(骨を増やす処置)を行う
年齢が若い(主に未成年) 顎の成長が止まるまでは、入れ歯など別の方法で経過観察をし、タイミングを見てインプラント治療に移行する
虫歯や歯周病がある人 インプラントの前に虫歯や歯周病の治療を行う
歯並びが悪い人 矯正を行い、歯並びを整える
糖尿病を患っている・透析を受けている人 歯科医師、かかりつけ医と相談
健康に不安がある人
  • 歯科医師、かかりつけ医と相談
  • 生活習慣を整え、健康状態を万全にする
妊娠している人
  • できれば出産後に治療を行う
  • 妊娠中にインプラント治療を行う場合は、母子ともに体調を見ながら、歯科医師との相談のもと行う
喫煙習慣がある人 少なくともインプラント治療前後は禁煙する
デンタルケアが不十分なケース
  • 日頃の歯磨きの仕方の見直しやプロによるブラッシング指導を行う。
  • 定期的にメンテナンスに通う

骨が少ない・薄い場合の主な「骨造成」

前述した通り、インプラントを確実に埋入し、その後の安定性を保つためには顎の骨の量が十分にあることが条件です。そのため、骨が少ない・薄い場合はインプラント手術とは別に「骨造成」という骨を増やす処置が必要となります。

骨造成にも治療箇所や骨の厚みなどによって治療方法や治療期間が異なるため、下記にてそれぞれ解説いたします。

ソケットリフト

目の下、鼻の横には上顎洞といわれる空洞が存在します。上顎のインプラント手術の場合、その上顎洞の下にある骨にインプラントを埋入するため、骨の量が十分になければ治療を行うことができません。

もし骨が少ないまま埋入を行ってしまった場合、インプラント体が上顎洞を突き抜け、炎症を起こしてしまう危険性もあります。

ソケットリフトは主に上顎のインプラント手術の際に用いられ、骨の量が十分でない場合に行う骨造成術の一つ。骨の厚みが5mm以上あることと、歯1本分の範囲であれば適応できる処置です。

ソケットリフトはインプラント埋入術と同時に行い、元々歯が生えていた箇所から骨補填を行うのですが、抜歯を行う場合には抜歯窩から骨を補います。

インプラント埋入時もしくは抜歯時の際に同時に骨造成を行うことや傷口が小さく済むことから治療期間が短くなり、患者様の精神的負担を減らせることがメリットと言えるでしょう。

サイナスリフト

サイナスリフトもソケットリフトと同様、上顎のインプラント手術を行ううえで骨の量が十分にない場合に行う骨造成術です。骨の厚みが5mm未満、または広範囲にわたって骨が少なくなっている場合に適応される処置です。

サイナスリフトの場合は、歯が生えていた部分の側面の歯茎を切開し、さらに露出した骨を切り抜き、シュナイダー膜(上顎洞粘膜)を慎重に剥がし、そこにできたスペースに骨補填を行っていく流れが基本。

ただ、ソケットリフトとは異なり、傷口の治癒や骨の量が増えるのを待った後、インプラントを埋入するため、その分治療期間が長くなるのが特徴です。

GBR法(骨誘導再生療法)

GBR方もソケットリフトやサイナスリフトと同様、骨が少ないところに対して骨を補い、骨の再生を促す手術の一つです。ただし、上顎以外でも適用可能な治療法となります。

GBR法はインプラント治療の前に行う場合とインプラント埋入時と同日に行う場合があり、これは患者様の口腔内や骨の状態、治療方針、歯科医院などによって判断が異なります。

流れとしては歯茎を切開し、骨を露出させた状態で骨補填を行うのですが、この際骨造成の妨げとなる線維芽細胞の侵入を防ぐためメンブレンと呼ばれる人工膜で覆い、骨が再生できるスペースを確保。その後歯肉を縫合して治療終了です。

なお、骨が再生されるのには3ヶ月~半年以上期間が必要になるため、骨の状態が安定するまでには時間がかかることを理解しておきましょう。

どうしてもインプラント治療ができない場合の治療法

では、どうしてもインプラント治療ができない場合どうすれば良いのでしょうか。

歯を失ってしまった部分を補う治療法には、インプラント治療の他に入れ歯とプリッジがあります。また、インプラント治療の代替え案として勘違いされやすい差し歯についても併せて解説いたします。

入れ歯

入れ歯は天然歯に似せた人工の歯と歯茎で、失ってしまった部分を補う取り外し式の装置です。保険適用で外科手術もないことから、手軽に治療を受けられます。

また、取り外し式のため、手軽にお手入れができて口腔内の衛生面を保ちやすいのもメリット。

しかし、見た目が目立つ、バネを引っかける歯に負担がかかり寿命が縮む、噛む力が弱く食事がしにくい、装着したときの違和感があるなどデメリットがあることも知っておきましょう。

ブリッジ

ブリッジは失った部分の両隣の歯を土台として使用し、連結した歯を装着する治療法です。セメントで固定するため取り外しの必要がなく、装着した時の違和感もほとんどないため、保険適用でもあることからブリッジを選択する方は多くいらっしゃいます。

しかし、両隣の健康な歯を削らないといけない、両隣の歯が受ける負担が大きくなることで長持ちしにくい、連結している歯のため清掃が行き届きにくいといったデメリットが挙げられるのも否定できません。

なお、ブリッジは失った歯の両隣の歯が残っていることが条件となります。

差し歯

差し歯は完全に失った歯を補うためのインプラントや入れ歯、ブリッジなどの治療法とは異なり、歯根が残っている場合に限り適用できる被せ物の一種です。

そのため、抜歯後の治療法として差し歯を選択することはできません。まずはインプラント治療を検討される前に、本当に抜歯しないといけないのか、歯根を残した状態で治療はできないのか、歯科医院に相談するとよいでしょう。

インプラントができないケースでも諦めないで!歯科医院へご相談を!

インプラント治療は高度な技術を要するうえ外科手術を伴うことから、患者様の口腔内や全身状態、生活習慣などによって治療ができるケース、できないケースがあります。

これもインプラント治療を安心・安全に行い、インプラントを長持ちさせるために大切な判断です。

ただし、インプラントができないケースに当てはまっていたとしても、患者様の状態や対処法を活用することによって治療が可能になる場合もあります。そのため、インプラント治療を検討する際はまず、歯科医院に相談することをおすすめします。

当院「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」では、患者様の口腔内の状態やご要望に合わせたご提案をさせていただいております。インプラント治療を検討されている方やご質問がある方は、ぜひ一度当院へお気軽にご相談ください。

カテゴリー:インプラント&歯科ブログ   投稿日:2024年12月2日