インプラントに必要な骨を作る「骨造成」の種類と費用を徹底解説!
インプラント治療は、失った歯を補う治療法として非常に有効です。天然歯と遜色ない機能性・審美性を持ち合わせていることから多くの方に選ばれています。
そんなインプラント治療では、土台となるインプラント体を顎の骨に埋入して固定するため、安定させられるだけの十分な顎の骨が必要です。顎の骨が薄い場合や量が少ない場合、歯科医院によっては治療を断られることもあります。
しかし、心配する必要はありません。何らかの理由で骨の量が少ない場合でも、顎の骨の量を増やす「骨造成」という方法を用いれば、インプラント治療が可能です!
本記事ではその「骨造成」の種類やおおまかな費用、顎の骨の量がインプラント治療に影響する理由などについてご紹介していきます。
《骨造成にかかる費用の相場》
骨造成の種類 | 費用の相場 |
---|---|
サイナスリフト | 10~35万円 |
ソケットリフト | 3~10万円 |
GBR法(骨誘導再生療法) | 3~15万円 |
遊離骨移植(ボーンクラフト) | 5~30万円 |
ソケットプリザベーション | 1.5~10万円 |
インプラント治療を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
顎の骨が少ない場合はインプラント治療ができない
冒頭でもお話ししたように、顎の骨が薄く、少ない場合は”すぐに“インプラント治療を行うことはできません。「すぐに」を強調したのは、本記事で紹介する「骨造成」によって十分な骨を作ることができればインプラント治療が可能になるからです。
まずは顎の骨の量がインプラント治療に影響する理由や、そもそも顎の骨がどのような原因で少なくなるのかを見ていきます。
顎の骨の量がインプラント治療に影響する理由
インプラント治療は、顎の骨に穴をあけてインプラント体を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療です。そのため、顎の骨が十分な厚みと量を有していることが前提条件。
もし顎の骨が不足していればインプラント体を埋め込みしっかり固定できない、たとえ埋入できてもインプラントと骨が結合しにくく、最悪の場合抜け落ちてしまう可能性があります。そのため、顎の骨が薄く少ない場合はインプラント治療ができないと判断されるのです。
顎の骨が少なくなる原因
顎の骨が少なくなる原因は複数ありますが、主な原因は以下の通りです。
- 歯周病
- 入れ歯やブリッジの使用
- 歯がない状態の長期間の放置
- 加齢
1つずつ見ていきましょう。
歯周病
顎の骨が少なくなる原因の一つとして、歯周病が挙げられます。歯周病は、歯を支える骨を溶かす感染症であり、放置すると歯茎の退縮(歯茎がすり減り、歯根が露出した状態)や歯が抜け落ちる可能性があります。
そもそもの原因は口腔ケアの不足などで、長期にわたってプラークや歯石が蓄積されることで起こる細菌感染です。これが歯周ポケットから骨にまで到達し、重症化すると歯周炎へと進行して骨を溶かしてしまいます。
入れ歯・ブリッジの使用
入れ歯やブリッジの使用も顎の骨が少なくなる原因のひとつです。通常、歯は噛むことによる刺激によって骨を維持しています。
しかし、入れ歯やブリッジは、天然歯よりも噛む力が弱く、顎の骨まで適度な刺激が伝わりません。そのため骨が痩せてしまうのです。
歯がない状態の長期間の放置
歯が顎の骨に与える刺激は、骨の維持・造成、健康を保つ上で非常に重要です。しかしながら、歯がない状態が長期間続くと、刺激がないことによって骨が徐々に吸収(溶ける)されてしまいます。
時間が経てば経つほど、顎の骨の量は減少していき、それがやがて歯を失うまでに深刻化してしまうのです。顎の骨の減少を防ぐためにも、歯を失った場合は速やかに歯科医師の診察を受け、適切な治療を受けましょう。
加齢
加齢による顎の骨量の減少は避けられない現象です。人間の体は年齢を重ねるにつれて、骨の再生能力が低下し、骨密度が減る傾向にあります。これはもちろん顎の骨にも当てはまります。
特に咀嚼などの日常的な機能が低下すると、顎の骨は刺激を受けにくくなり、その結果、より骨の吸収が進むのです。
また、加齢に伴い唾液の分泌量が減少することで、口腔内環境が悪化し、歯周病などにもかかりやすくなります。これらが複合的に絡み合い、骨の減少を加速させる可能性があるでしょう。
顎の骨が少ない状態でインプラント治療を行うリスク
インプラントを支える役割をするのが顎の骨。この骨がない状態では当然インプラントを安定させることができません。
そのため、インプラントの土台となる顎の骨が足りないまま無理にインプラント治療を行っても、治療後にグラついて痛みが出たり、抜け落ちたりしてしまうことがあります。
そのほか顎の骨が少ないと、インプラントを埋入するスペースが不足することで手術の難易度も上がり、神経や血管を傷つけるリスクも高くなります。
骨が少ない状態で無理やりインプラントをするのはリスクしかないため、絶対に避けるべきです。
それでは、どのようにして顎の骨を増やすのかというと、次にご紹介する「骨造成」という方法を用います。
骨を作り、骨を増やす「骨造成」の主な種類5つ
骨造成とは、顎の骨が足りない部分の骨を再生して増やす治療法です。顎の骨が薄く少ない方でも、骨造成を行うことでインプラントに必要な顎の骨を確保することができます。
骨造成の主な種類は次の5つです。
- サイナスリフト
- ソケットリフト
- GBR法(骨誘導再生法)
- 遊離骨移植術(ボーンクラフト)
- ソケットプリザベーション
実際の治療では、一人ひとりの口腔内の状態などを診察・検査し、歯科医師が適切な治療法を判断します。具体的にどのような治療法なのか、1つずつ見ていきましょう。
サイナスリフト
「サイナスリフト」は、上顎の奥歯を補綴するインプラント治療において、骨の高さが不足している場合に行う手術です。※「サイナス」とは上顎洞のこと。
骨の厚みが5mm未満の場合など、多くの骨を補わなくてはいけない場合、つまり比較的重度の場合に用いられます。
具体的には、歯茎を切開して上顎洞を露出させ、直接持ち上げて骨補填剤(骨を形成するための材料)を入れて骨を作る方法です。時間が経つとインプラントを支える骨が増加するとともに、今ある骨と一体化していきます。
これによって、インプラント治療を行うために必要な骨の量と厚さを得ることができるのです。なお、上顎以外には行えません。
ソケットリフト
「ソケットリフト」は、歯槽骨(ソケット)の上部に位置する上顎洞の空洞の底を持ち上げ、骨補鎮材を入れて骨を再生する治療です。これにより、上顎洞と歯槽骨の間に新たな骨が形成され、インプラントの埋入に必要な骨の高さが確保されます。
ソケットリフトは増やす骨量が比較的少ない場合、部分的に骨を再生したい場合に行われることが多く、一般的には骨の厚みが5mm以上ある場合などに適用されます。
なお、インプラント体の埋入と同時に行えますが、上顎以外には適用できません。
GBR法(骨誘導再生法)
GBR法は、これまでの2つと違って、上顎以外の様々な部位に適用できる骨再生の手法です。「骨誘導再生法」とも呼ばれます。
骨が不足している部分に自家骨(自分の骨)や人工骨、骨補填材などを填入します。また、特殊な膜(メンブレン)を用いて骨の成長を促し、健康な歯肉との境界を保護しながら人工的に骨量を増加させるのが特徴です。
GBR法は通常、インプラント治療の前に行われます。新しい骨が再生されるまで3〜6ヶ月程度待つ必要があるでしょう。
遊離骨移植術(ボーンクラフト)
遊離骨移植術は重度の歯周病などで顎の骨が大いに不足している場合や、歯を支えるために骨量を増やす必要がある場合に適用されます。
患者様自身の別の部位から健康な骨を採取し、不足している箇所に移植することで、骨の再生を促す治療法です。
骨が定着するのに4~6ヶ月程度かかり、骨がしっかり定着してからインプラントの埋入を行います。
ソケットプリザベーション
ソケットプリザベーションとは、歯を抜いた際の穴に人工骨や骨補填材を入れて「骨の吸収を防ぐ」という方法です。つまり、将来的なインプラント治療のための前準備ということになります。
ソケットプリザベーションによって骨量の減少を抑えることで、歯周病によるさらなる歯の損失を防ぎつつ、将来の補綴治療の成功率を高めることに期待できます。
抜歯した場所の骨が固まるのに4~9ヶ月程度かかり、骨が固まってからインプラントの埋入を行います。
インプラント治療における骨造成の費用相場
インプラント治療における骨造成の費用相場は以下の通りです。
骨造成の種類 | 費用の相場 |
---|---|
サイナスリフト | 10~35万円 |
ソケットリフト | 3~10万円 |
GBR法(骨誘導再生療法) | 3~15万円 |
遊離骨移植(ボーンクラフト) | 5~30万円 |
ソケットプリザベーション | 1.5~10万円 |
ソケットリフトは骨の不足量が少ない場合に用いられるため、費用が安い傾向があります。
一方、骨の不足量が多く比較的重度な症例で行われるサイナスリフトは、手術範囲が大きい上、難易度も高くなるため他の治療法に比べて費用が高くなる傾向があります。
骨造成の費用が高い理由
骨造成の費用が他の歯科治療に比べて高額であるのには理由があります。
ここからは骨造成の費用や保険適用に関することについて着目して見ていきましょう。
基本的に骨造成は「保険適用外」
骨造成は基本的にインプラント治療と同じように保険適用外です。そのため治療費用の全額が自己負担となります。また、自由診療であり歯科医院ごとに治療費が決定されることから、相場と比べて高額な価格を設定しているところもあるようです。
また、骨造成治療には高価な骨補填剤や人工骨が用いられるため、必然的に材料費も高くなってしまいます。さらに、高度な専門技術と治療経験が必要とされるため、熟練した歯科医師による施術が不可欠であることも理由のひとつとなるでしょう。
こうした複合的な要因が、骨造成の費用が高くなる理由と考えられています。
【一部】骨造成・インプラント治療で保険が適用されるケース
一方、一部のケースでは保険適用となります。保険が適用されるのは主に次のような状況です。
▼先天的な理由
- 生まれつき顎の骨の1/3以上が連続して欠損している場合
- 顎の骨が先天的に形成不全であると診断された場合
- 永久歯が生えてこない先天性欠如歯が6本以上ある場合
- 永久歯が生えてこない先天性欠損歯が連続して4本以上ある場合
▼後天的な理由
- 腫瘍や顎骨骨髄炎などの病気により、顎の骨が1/3以上連続して欠損した場合
- 事故や外傷で、顎の骨が1/3以上連続して欠損した場合
- 上記の状態から骨移植を行うことで顎の骨が再建された場合
このように限られたケースにのみ保険が適用され、該当するケースが少ないのが現状です。
保険適用でインプラント治療を受けるための医療機関の条件
保険適用でインプラント治療を受けるには、前述したケースに該当するだけでなく、以下の医療機関の条件を満たす必要もあります。
国の定める厚生労働省の指導基準に基づいた適切な医療設備と技術を有する医療機関でなければならず、その具体的な条件は以下の通りです。
- 口腔外科あるいは歯科を診療科目に設けている施設であること
- 入院用のベッドが20床以上あること
- 当直体制が整備されていること
- 医薬品や医療機器等の安全を確保するための体制が整っていること
- 歯科口腔外科または歯科として5年以上稼働していること(または、インプラント治療の経験が3年以上ある医師が常勤で2名以上配置されていること)
以上のように、インプラント治療が保険適用されるには厳しい条件があります。
骨造成の費用を抑える方法
前述した通り保険適用とはならないものの、骨造成治療は「医療費控除」の対象となります。
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が10万円を超える、または総所得金額の5%を超える場合に所得控除が受けられる制度です。申請の手間はかかるものの、費用負担を抑えるためにも積極的に活用しましょう。
医療費控除の具体的な方法はこちらの記事でも紹介しています。
インプラントの骨造成に関するよくある質問
最後に、インプラントの骨造成に関するよくある質問にお答えします。
インプラントの骨造成は失敗することもある?成功率は?
インプラント治療における骨造成の成功率は、一般的に80~90%程度と高い傾向にあると言われています。ただし、患者様の健康状態、口腔内の状況、施術する歯科医の技術などによっても異なり、決して100%ではありません。
失敗の可能性がある原因として、患者様の骨の質、喫煙や糖尿病といった全身疾患の有無、医師の治療経験や技術不足、術後のケアの不十分さなどが挙げられます。成功率を上げるためにも治療経験や技術力のある歯科医院を選びましょう。
骨造成で骨ができるまでにどのくらいの期間がかかる?
骨造成手術後、新たな骨が形成されるまでの期間は、個人差はもちろん、手術の方法や使用する材料、手術の範囲によっても異なりますが、一般的には3~6ヶ月程度かかります。
場合によっては1年ほどかかるケースも存在します。
骨造成手術の際は入院が必要ですか?
インプラント治療のために行う骨造成では、基本的に入院の必要はありません。骨造成の手術もインプラント埋入手術も1日で終わります。
しかし、手術の際に静脈内鎮静法(麻酔)を利用した場合、術後は車・自転車の運転を控えるなど様々な制限がありますので、事前に確認しておくのが安心です。
骨造成で諦める必要なし!インプラントをお考えなら高田歯科クリニックへ!
インプラント治療は、多くのメリットを得られる治療法です。たとえ顎の骨が少なくても、骨を増やす骨造成により、インプラント治療を諦める必要はなくなります。
ただし、骨造成の種類によっては、非常に高度な技術と治療経験が必要です。インプラントはこれから先何年も付き合っていくものですから、治療を任せられる信頼できる歯科医院を選びましょう。
当院「高田歯科クリニック」ではインプラントに関する無料相談を行っております。インプラント治療のこと、骨造成のこと、また治療にかかる費用など、まずはどんなことでもお気軽にご相談ください!
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2024年5月9日