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院長 高田 徹

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インプラントにフッ素はダメ?インプラント治療後の歯磨き粉の選び方も紹介

フッ素といえば虫歯予防として多くの方がご存知かと思います。このフッ素は歯磨き粉に含まれていることがほとんどのため、日頃から虫歯に対するケアを行えている方が多いでしょう。では、インプラントに対してフッ素を使用しても大丈夫なのでしょうか。本記事では、フッ素がインプラントに与える影響やインプラント治療後の歯磨き粉の選び方について詳しく紹介します。インプラントを長持ちさせるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

この記事でわかること

  • インプラントにフッ素入りの歯磨き粉を使用するのは問題ない
  • そもそも「フッ素」は歯の健康を守るための重要な成分で、虫歯の予防に効果的
  • 日本口腔衛生学会も、インプラントや他のチタン製歯科材料を使用する患者様に対して、フッ素入り歯磨き粉の使用を推奨している
  • インプラント治療後の歯磨き粉の選び方は、①研磨剤入りは避ける ②顆粒入りタイプには注意する ③フッ素入り歯磨き粉は市販のものでも問題ない ④迷う場合は歯科医院で取り扱っている歯磨き粉を購入する⑤歯ブラシの選び方にも気を付ける
  • 歯科医院でのフッ素湿布は、高濃度かつ酸性のフッ素を使用するため要注意

インプラントにフッ素は問題ない

インプラント治療後にフッ素入りの歯磨き粉を使用することは問題ありません。むしろ、フッ素は虫歯予防と口腔内の健康維持に非常に有効な成分です。

歯磨き粉や洗口液の中に含まれる程度のフッ素濃度であれば、インプラント材料であるチタンへの悪影響はほとんどありません。したがって、インプラント治療後も安心してフッ素入りの歯磨き粉を利用することができます。

そもそも「フッ素」の役割・効果とは

フッ素は歯の健康を守るための重要な成分で、虫歯の予防に大きな効果を発揮します。フッ素には主に下記の3つの働きがあります。

A.再石灰化を促進

食事によって歯が酸にさらされると、エナメル質が溶け出しますが、フッ素はこの損傷した部分を修復します。これを再石灰化といいます。

B.歯の質を強くする

フッ素がエナメル質に取り込まれると、酸に対して強いフルオロアパタイトへと変わります。このおかげで、歯は酸によるダメージに強くなります。

C.虫歯菌の活動を抑制

新しい虫歯の発生を防ぎ、口腔内の健康を維持できます。

フッ素のこれらの効果により、日々のケアにおいて取り入れることが推奨されているのです。

日本口腔衛生学会がフッ素入り歯磨き粉を推奨

日本口腔衛生学会は、インプラントや他のチタン製歯科材料を使用する患者様に対しても、フッ素入り歯磨き粉の使用を推奨しています。

その理由として、フッ素が唾液によって薄まることによりインプラントの腐食リスクが低くなること、フッ素が天然歯の虫歯リスクを軽減してくれる効果があることが考えられます。

つまり、特に天然歯が多く残っている人にとって、虫歯予防のメリットの方が大きいと言えるのです。これにより、インプラント治療後も安心してフッ素入り歯磨き粉を利用し、口腔内の健康維持を図ることが可能です。

フッ素がインプラントに良くないと言われていた理由

フッ素がインプラントに悪影響を及ぼすとされてきた背景には、日本フッ素研究会による過去の発表があります。

2016年に同研究会は「900ppm以上の高濃度フッ素がチタンを腐食させる」と報告しました。これにより、インプラントの素材であるチタンにフッ素が悪影響を与える可能性が指摘されました。しかし、これは900ppm以上ではなく、9,000ppm以上の誤りでした。

また、実際には、国内で市販される歯磨き粉のフッ素濃度は1,500ppm未満であり、9,000ppmという高濃度には遠く及びません。

フッ素研究会による発表は、あくまで実験室での高濃度フッ素に関するものであり、人間の口腔内での疫学調査によるものではありません。実際には、唾液によってフッ素の濃度は薄まりますし、日本の基準を満たす市販品の範囲内ではインプラントに大きな悪影響を与える可能性は非常に低いものです。

歯科医院で高濃度フッ素を使用する場合でも、インプラント部分をしっかり保護した上で行われるため、適切な対策がとられています。

インプラント治療後の歯磨き粉の選び方

インプラント治療後には、インプラントを健康に保つために適切な歯磨き粉を選ぶことが非常に重要です。市販の歯磨き粉の中から最適なものを選ぶ際は、特に研磨剤や顆粒の有無などに注意してください。

ここでは、インプラント治療後に適した歯磨き粉の選び方について詳しく説明します。

研磨剤入りは避ける

研磨剤が含まれていると、インプラントを傷つける可能性があり、特にインプラントの表面を削ったり、インプラントと歯茎の間に入り込み炎症を引き起こすことがあります。

研磨剤の入った歯磨き粉では、インプラントの周囲にトラブルを起こすリスクがあるため、成分を確認し「炭酸カルシウム」や「ケイ素」といった表示のある製品は避けるようにしましょう。

健康なインプラントを維持するためには、研磨剤を含まない歯磨き粉を選ぶことが重要です。

顆粒入りタイプには注意する

顆粒入りタイプの歯磨き粉は、顆粒が歯茎とインプラントの境目から中に入り込むことがあります。これが原因で炎症を引き起こす可能性があるため、インプラント治療後には避けるのが無難です。

また、顆粒入りタイプの歯磨き粉の中には研磨剤が含まれている商品も存在します。前述した通り、「炭酸カルシウム」や「ケイ素」などの成分が含まれていないかを確認した上で選ぶようにしましょう。

フッ素入り歯磨き粉は市販のものでも問題ない

インプラント治療後は、フッ素入りの歯磨き粉が市販のものであっても問題なく使用できます。日本国内で販売されているフッ素入り歯磨き粉は、フッ素の量が適切に管理されているため、安心して使用することができます。

また、フッ素は歯の再石灰化を助ける役割があるため、インプラントの周囲の歯の健康を保つのに役立つのが魅力の一つです。

ただし、外国製の歯磨き粉を使用する場合には、フッ素量を確認するか、歯科医院で相談してから使用するようにしましょう。

迷う場合は歯科医院で取り扱っている歯磨き粉を購入する

もしもどの歯磨き粉を選べばよいか迷う場合は、歯科医院で取り扱っている歯磨き粉を購入するのがおすすめです。歯科医院では、口腔の健康維持に効果的な成分を含む歯磨き粉を取り扱っています。

歯科医師おすすめの歯磨き粉は、インプラントの健康を考慮して開発されているため、安心して利用することが可能です。定期健診の際に歯科医師や歯科衛生士に相談することで、自分に合った最適な製品を見つけることができるでしょう。

歯ブラシの選び方にも気を付ける

インプラント治療後は、歯磨き粉だけでなく歯ブラシの選び方にも注意しなければなりません。特に、柔らかめの歯ブラシを使用することで、治療直後のデリケートな歯茎や歯を優しくケアできます。

また、細かい毛先を持つ歯ブラシを選ぶと、歯と歯の間やインプラント周囲の汚れを除去しやすくなります。インプラント周囲炎の予防にもつながるため、フッ素入りの歯磨き粉と併用して、歯間ブラシやフロスも使いながら丁寧にケアすることを心がけましょう。

インプラント治療後にフッ素入り歯磨き粉を使うメリット

フッ素入りの歯磨き粉を使用することは、インプラントの健康を維持するために欠かせない手段の一つです。

また、フッ素は虫歯の予防や口腔環境の向上に役立ち、インプラントを長持ちさせるのに役立ちます。ここからは、インプラント治療後にフッ素入り歯磨き粉を使うメリットについて詳しく説明します。

歯のエナメル質を強化する

フッ素は歯のエナメル質を強化する効果があり、このエナメル質は歯を保護し、酸から歯を守る重要な役割を担っています。

酸は食事や虫歯菌によって生成され、エナメル質を溶かしてしまう可能性があるのですが、フッ素はエナメル質を酸に強い「フルオロアパタイト」に変化させ、酸に対する抵抗力を高めるのが特徴です。

これにより、エナメル質の保護力が向上し、虫歯になりにくい強い歯が育まれます。特にインプラント周囲の天然歯を守るためにフッ素入りの歯磨き粉が有効です。

歯の修復を促進する

日常生活の中で、歯の表面では「脱灰」と「再石灰化」が絶えず繰り返されています。脱灰が進行すると虫歯になりやすくなりますが、フッ素はその再石灰化を促進するのに欠かせません。

エナメル質を強化したり溶解箇所を修復することにより、初期の虫歯を防ぐ手助けとなります。このプロセスは、特に再石灰化が重要な初期虫歯の段階で、フッ素入りの歯磨き粉を使うことで更に効果的だと言えるでしょう。

インプラントを入れた後も、残った天然歯を健康に保つためにはフッ素の存在が頼りになります。

虫歯菌の働きを抑制する

虫歯を作る主な細菌である「ミュータンス菌」が糖を分解して酸を生成し、歯の脱灰を促進しますが、フッ素はこの酸の生成を抑制する働きを持ちます。具体的には、フッ素は虫歯菌による酸の生産を助ける酵素の活動を抑えることで、酸の生成を軽減するのです。

この働きにより、虫歯の進行を遅らせることが可能であり、虫歯予防の面でもフッ素入りの歯磨き粉を使うことが推奨されます。インプラントの周りの環境を良好に保つ上で、この虫歯菌の抑制効果が重要です。

初期虫歯を予防する

フッ素は初期虫歯の予防にも効果を発揮するのが特徴です。口腔内では、酸によって溶け出す脱灰と溶け出した部分を修復する再石灰化が繰り返し行われています。

その中で、フッ素は溶け出したカルシウムやリンが歯に戻る再石灰化を助ける働きを持つため、初期段階での虫歯の悪化を防ぐことができます。

日常的にフッ素入りの歯磨き粉を使用することによって、長期間に渡り初期虫歯の発生を抑え、口内環境を安定させることが可能。そのため、インプラント治療後に限らず、天然歯の健康管理にもフッ素が不可欠です。

インプラント周囲炎の予防ができる

インプラント周囲炎はインプラントの周囲組織に歯周病のような症状を引き起こすものです。進行すると骨の吸収が進み、インプラントの動揺や脱落につながる可能性があります。

インプラント周囲に形成されるプラークがインプラント周囲炎を引き起こす主な原因なのですが、フッ素はその細菌の働きを抑制します。

具体的には、細菌の繁殖やバイオフィルムの形成を抑えることで、インプラント周囲炎の発生リスクを低減するため、フッ素入りの歯磨き粉を毎日使用することが、インプラントの健康維持につながるでしょう。

フッ素入りの歯磨き粉を使用する場合の注意点

フッ素は適切に使用すれば、歯の健康に非常に役立ちます。しかし、特にインプラントをしている方はフッ素の濃度に注意しなければなりません。というのも、濃度が高すぎるとインプラントのチタン素材に悪影響を及ぼす可能性があるからです。

理想的には、濃度9000ppm以下のフッ素を使用するようにし、使用頻度も過度にならないよう心がけましょう。海外製品などはフッ素濃度が高い場合があるため、事前に歯科医に相談することをおすすめします。

通常の歯磨き粉であれば、フッ素濃度は安全範囲内に設定されているため、毎日の使用には問題ありません。しかし、フッ素の取り込み過ぎは中毒作用につながる可能性もあるため、使用量や頻度には注意が必要です。

歯科医院でのフッ素湿布には注意が必要

歯科医院でのフッ素湿布は、高濃度かつ酸性のフッ素を使用するため、インプラントを受けた方は特別な配慮が必要です。理由としては、高濃度のフッ素を塗布することで、インプラントに使用している素材のチタンに腐食を引き起こす可能性があるためです。

インプラント治療を受けた歯科医院では、治療歴を把握しているため問題ありませんが、他の歯科医院へ行く場合には事前に治療歴を伝えましょう。これにより、フッ素湿布に関してインプラント治療を受けたことを考慮したうえでの対応をしてもらえます。

また、高濃度フッ素による影響を最小限に抑えるためには、処置後には口内をしっかりとすすぐことが重要です。適切な処置や管理を行い、インプラントを長持ちさせましょう。

「インプラント」と「フッ素」に関するよくある質問

最後に、インプラントとフッ素に関するよくある質問についてお答えしていきます。

フッ素がインプラントを腐食させることはありますか?

一般的に市販で手に入る歯磨き粉には適量のフッ素が含まれており、これがインプラントを腐食させる可能性は非常に低いとされています。

しかし、高濃度かつ酸性のフッ素は、インプラントに対して腐食のリスクが増加する場合があります。したがって、高濃度のフッ素が含まれる商品を使用する際は、使用方法について歯科医師に相談しましょう。

インプラントにフッ素入り歯磨き粉を使っても大丈夫ですか?

インプラントを使用中でも、フッ素入りの歯磨き粉を使用することは問題ありません。歯磨き粉に含まれるフッ素濃度が1000ppm程度であれば、インプラントに対し特別な悪影響はないとされています。

しかし、フッ素濃度が非常に高い製品、例えば9000ppm以上のものは避けた方が良いでしょう。フッ素を正しく使うことでインプラントの腐食を防ぎつつ、天然歯の虫歯予防にも効果を発揮します。

インプラント付近の天然歯にフッ素は必要ですか?

インプラント付近の天然歯にも、フッ素を使用することは必要です。フッ素には、虫歯予防や歯の質を強くする役割があるため、インプラントだけではなく今ある天然歯を健康に保つためにも非常に大切です。

そのため、インプラントの有無に関わらず、フッ素入りの歯磨き粉を使用し、日頃から丁寧な歯磨きを心がけましょう。

フッ素入り洗口液はインプラントに使用してもいいですか?

フッ素入りの洗口液は、インプラントにも使用することができます。ただし、そのフッ素の濃度が200〜900ppm程度の範囲内であることが重要であり、高濃度のフッ素が含まれている洗口液は避けた方が良いでしょう。

また、洗口液は補助的なものとして使用し、実際の歯磨きが口腔衛生を保つ主な手段であることを忘れないでください。

特に夜間は唾液の分泌が減り、虫歯のリスクが高まるため、寝る前の使用が有効です。正しい方法で口腔ケアを続けることで、インプラントと歯全体の健康を保ちましょう。

インプラント治療後、適切な歯磨き粉を選んでお口のケアを徹底しましょう

インプラント治療を受けた後は、口内の健康を維持するために適切な歯磨き粉を選ぶことが重要です。特に、インプラント周囲炎や天然歯の虫歯、歯周病を防ぐために、フッ素入りの歯磨き粉を取り入れることをおすすめします。

市販の歯磨き粉に含まれる程度のフッ素であれば、インプラントに悪影響を与える心配はありませんが、使用する製品について迷う場合は歯科医院へ相談しましょう。

インプラント治療後のケア方法や歯磨き粉の選び方について疑問やご質問がある方は、お気軽に高田歯科クリニック(杉並区荻窪)へご相談ください。

カテゴリー:インプラント&歯科ブログ   投稿日:2025年2月3日