糖尿病だとインプラント治療はできないの?リスクや治療後の注意点も解説
糖尿病を患っていると、インプラント治療は受けられないと思っている方も多いのではないかと思います。しかし、結論からお伝えすると、糖尿病をお持ちの方もインプラント治療は可能です。
本記事では、糖尿病とお口の関係やインプラント治療を安心して受けるために理解しておきたいリスク、治療後の注意点について詳しく解説。糖尿病でインプラント治療を検討されている方はぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- 糖尿病でも血糖値のコントロールができていれば、インプラント治療は可能
- ただし、糖尿病患者にとってはリスクがあることを理解すべき
- インプラント治療は外科手術を伴うため、血糖値や口腔内の状態によっては治療ができないケースもある
- 糖尿病の方がインプラント治療を受けるリスクは、①歯周病になる可能性がある ②細菌感染のリスクが上がる ③低血糖になる可能性がある ④骨の吸収が進む ⑤血液の循環が悪化する ⑥傷の治りが遅い
- 糖尿病でインプラント治療を受ける際の注意点は、①血糖値を確認する ②かかりつけの内科医と歯科医に相談する ③感染症に要注意 ④血糖値をコントロールする
糖尿病とは
糖尿病は、膵臓が食事から得た糖質を適切に代謝するのに必要なインスリンが不足したり、十分に作用しなかったりすることによって発症する慢性疾患です。
この結果、血液中のブドウ糖の濃度が増加し、慢性的に血糖が高くなります。糖尿病には1型および2型の異なるタイプが存在し、いずれにおいても血糖値が高いのが特徴です。
H糖尿病の症状
糖尿病が進行すると、体内の微小血管や臓器の機能に障害が生じ、エネルギー不足を引き起こします。これにより日常的に疲れやすくなったり、倦怠感を感じたりすることがあります。
また、喉の渇きや多尿が見られ、さらには感染症のリスクが高まり、特に合併症が進むと神経障害が起こることも。この神経障害により、痛みや感覚が鈍くなるため、病気の進行に気づきにくくなる危険性があるのです。
糖尿病とお口の関係
糖尿病は全身に多様な影響を及ぼすだけでなく、口腔内の健康にも重大な影響を与えます。
具体的に口腔内では以下のような影響が現れやすくなります。
唾液の分泌が減る
糖尿病の進行に伴い、高血糖の状態が続くと尿の量や回数が増えることにより、口腔内の唾液分泌が減少することがあります。この現象は多くの場合、脱水状態によるものと言えるでしょう。
また、唾液には自浄作用や抗菌作用があるため、その分泌が減少すると、口腔内の菌が繁殖しやすくなります。細菌が増えることにより、虫歯や口臭のリスクが高まるため、糖尿病の患者は特に口腔ケアに注意を払う必要があります。
歯周病になりやすい、悪化しやすい
糖尿病患者は、免疫機能の低下や唾液の分泌減少により、歯茎が炎症を起こしやすくなります。そのため、歯周病が発症しやすく、さらに悪化しやすい状態に。
また、歯周病は糖尿病の合併症の一つと考えられており、適切な口腔ケアと定期的な歯科検診が重要です。歯周病の管理は、全身の健康を維持するためにも欠かせません。
歯周病の悪化により糖尿病が悪化することも
歯周病が進行すると、口腔内で炎症性物質(TNF-α)が増加し、それが血液中に拡散します。この炎症性物質はインスリンの作用を阻害し、血糖値をさらに上げてしまう可能性があります。
このため、歯周病の治療は糖尿病の管理をサポートする重要な要素と言えるでしょう。歯周病と糖尿病の関係は相互的であり、どちらも症状の管理が求められます。
糖尿病の場合のインプラント治療について
インプラント治療は外科手術を伴うため、糖尿病患者にとってはリスクがあるとされていますが、血糖値のコントロールが十分であれば、インプラント治療を受けることも可能です。
そのため、自身の健康状態を理解し、医師としっかり相談しながら判断することが重要です。
糖尿病でもインプラント治療は可能
糖尿病の方でも、血糖値が安定している場合にはインプラント治療を受けることが可能です。目安として、HbA1cが6.9%以下、または空腹時血糖値が140ml/dl以下であることが治療の条件とされます。
もちろんこれは一例であり、最終的な判断は歯科医師や医療チームによって行われます。
また、口腔内環境の改善も重要で、特に歯周病の治療が欠かせません。手術前後には血糖値の管理と日々のメンテナンスが求められますが、適切なケアを続けることで治療可能な場合もあります。
インプラント治療ができないケースもある
糖尿病をお持ちの方でもインプラント治療が可能とお伝えしましたが、インプラント治療は外科手術を伴うため、血糖値や口腔内の状態によっては治療ができないケースもあります。
まず、高血糖の場合、手術箇所の感染症リスクを高めるだけでなく、長期的にインプラントの安定性を妨げる可能性があります。また、歯周病が重症化している場合も同じく感染症のリスクが高まるため、治療が見送られることもあるでしょう。
ただし、血糖値の管理や歯周病の治療を事前に行うことで治療が可能になるケースも大いに考えられるため、まずはかかりつけの内科や歯科医院に相談してみましょう。
糖尿病の方がインプラント治療を受けるリスク
糖尿病をお持ちの方がインプラント治療を検討する際、リスクが存在します。
このため、事前にリスクをしっかりと理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。以下で具体的なリスクについて説明します。
歯周病になる可能性がある
糖尿病の方は高血糖の影響で口腔内が乾燥しやすく、歯周病菌が増殖しやすい環境であり、歯周病になる可能性が高いと言えます。
中でもインプラント治療後に気を付けたいのが「インプラント周囲炎」。インプラント周囲炎とは、歯周病菌によってインプラントの周囲に炎症を起こし、出血や腫れを招き、最終的にはインプラントを支える骨を溶かしてしまう病気です。最悪の場合、インプラントが破損、脱落することもあります。
そのため、歯周病にかかりやすい糖尿病患者は、歯周病に対する予防や治療が欠かせません。
細菌感染のリスクが上がる
インプラント治療では顎の骨に直接インプラント体を埋め込むため、細菌感染のリスクが伴います。健康な人であれば大きな問題にならないことも、糖尿病患者の場合、免疫力の低下により感染症にかかりやすくなってしまうのです。
術後も感染症のリスクが続くため、インプラント周囲炎の予防を徹底することが欠かせません。感染症の発症がインプラントの治療の成功に影響を与える可能性があるため、術後ケアも慎重に行う必要があります。
低血糖になる可能性がある
糖尿病の状態やインプラント治療の内容によっては、インプラント治療後に食事制限をする場合があります。
食事制限をすることに加え、糖尿病の治療であるインスリン注射や血糖降下剤を使用し続けると血糖値が下がりすぎることで、低血糖を引き起こす可能性があるのです。
低血糖は意識障害や昏睡状態を引き起こす危険がありますので、治療計画の時点から低血糖の予防策を組み込んでもらうことが大切と言えるでしょう。
骨の吸収が進む
糖尿病患者は骨吸収が進みやすいとされ、インプラントを支える顎の骨が減少するリスクがあります。高血糖状態が続くことで骨の質が劣化し、インプラント治療を受けた後も骨吸収が進行する可能性があるのです。
インプラントは顎の骨で安定性を保つため、骨の吸収が進むとインプラントが動揺し始め、最終的には脱落してしまう恐れもあります。
血液の循環が悪化する
糖尿病は血管へのダメージを引き起こし、血液の循環を悪化させることがあります。
インプラント治療では栄養や酸素を届けるために必要な十分な血流が必要ですが、血流が低下するとインプラント体と顎の骨の結合が弱まり、傷口の治癒が遅れる可能性があるのです。
傷の治りが遅い
インプラント手術後の治療経過において、糖尿病患者は傷の治癒が通常よりも遅くなりがちです。インスリン生産量が不足することで傷の治癒を妨げ、さらにはインプラント体の定着を妨げるリスクもあります。
このため、回復期において口腔内の清潔を維持し、細菌感染を避けるためのケアや手術箇所に負担をかけないよう意識することが大切と言えるでしょう。
糖尿病でインプラント治療を受ける際の注意点
糖尿病の方は様々なリスクを伴うため、糖尿病をお持ちでない方と比べてインプラント治療を受ける際に注意すべき点がいくつかあります。主に以下の4つです。
血糖値を確認する
インプラント治療を受けるには、血糖値が安定していることが前提です。血糖値が高いと、治療後の回復が遅れたり、感染症のリスクが高まったりするため、普段から血糖コントロールが重要です。
日常的に血糖値を測定し記録しておくと、治療前の準備がスムーズ。特に治療前には、HbA1c検査で長期的な血糖値管理の状況を確認しておきましょう。
かかりつけの内科医と歯科医に相談する
安全にインプラント治療を受けるために、内科医と歯科医との連携は欠かせません。内科医が糖尿病の管理を専門としているため、インプラント治療前に相談することが推奨されます。
具体的には、血糖コントロールや投薬内容について情報を共有します。特にインスリンを使用している方は、内科医に治療の意向を必ず伝えましょう。
この協力体制によりインプラント治療中のリスクを低減し、治療後も安定した血糖値管理が可能になります。患者の健康状態をお互いに把握することで、安全かつ効果的な治療を実現できるでしょう。
感染症に要注意
治療後の感染症予防は、インプラントの成功にも直結します。糖尿病の方は感染症に対する抵抗力が低下しているため、念入りな口腔ケアが必要です。
治療後はインプラント部分の健康を保つために、日頃からご自宅でのセルフケアを徹底するとともに、歯科医院へ定期的なメンテナンスに通うよう心がけましょう。
また、もしインプラント治療を行う行う前に歯周病だと診断されたら、歯周病の治療も欠かせません。歯周病はインプラントを支える骨に影響を与え、成功率を低下させる可能性があります。
そのため、歯周病の治療が完了し、口腔内が健康な状態であることが確認できたら、インプラント治療を行うようにしましょう。
血糖値をコントロールする
インプラント治療中の低血糖発作のリスクも考慮に入れた血糖値のコントロールが大切です。具体的には、氷砂糖を常携することや、食後に治療を受けることで低血糖発作を未然に防ぐことができます。
また、日常的な血糖チェックも欠かせません。血糖値が高い場合は、治療を延期する判断も必要で、治療前後における血糖値の管理が大切です。普段から血糖値と口腔内の健康を確認することで、インプラント治療を安全に成功させる手助けとなるでしょう。
糖尿病でインプラント治療が可能な血糖値の基準
糖尿病を持つ方がインプラント治療を受けるためには、適切な血糖値の管理が重要です。一般的に、インプラント治療を安全に受けるための基準として、ヘモグロビンがブドウ糖と結合したHbA1cの値が7.0未満であることが求められます。
それに加え、空腹時の血糖値が180mg/dL以上である方は治療を受けることができません。これらの基準を満たすことで治療の成功率が高まり、術後の問題も減少する可能性が高まります。
血糖値コントロール方法
インプラント手術に臨む前の血糖値のコントロールは、安全に治療を受けるために極めて重要です。
血糖値を管理する方法として、食事療法、運動療法、薬物療法があります。これらを組み合わせることで、安定した健康状態を保ちつつ、手術を安全に進めることが可能となります。
食事療法
血糖コントロールにおいて最も大切なものが食事療法です。この療法では、カロリーや糖質の摂取量を制限し、バランスの取れた食事を心掛けることが求められます。野菜や食物繊維を積極的に取り入れるとともに、過食を避けることが重要です。
また、規則正しい食事時間を守ることも血糖値の急激な上昇を防ぎ、安定した血糖コントロールが可能になります。日常生活の中で意識的にこれらを実践し、健康を維持しましょう。
運動療法
運動療法は、定期的な身体活動を通じて血糖値を下げる効果があります。例えば、毎日30分の軽い運動、散歩やストレッチなどを行うことで、インスリンの感受性が高まり、血糖値の管理がしやすくなります。
ただし、個々の体調や能力に応じて無理のない範囲で運動を行うことが大切になるため、運動前には必ず医師に相談の上、取り組むようにしましょう。食事療法と併せることで、より効果的に血糖値をコントロールし、健康的な体を維持できるようになります。
薬物療法
薬物療法は食事や運動だけでなく、医薬品の助けを借りて血糖値をコントロールする方法です。この療法では医師の指示に従い、規則正しく薬を服用します。
薬物には血糖降下剤やインスリン注射があり、患者様の状態に応じて処方されます。なお、低血糖や高血糖の兆候に常に注意を払い、異常を感じたら速やかに医師に相談するようにしましょう。薬物療法を正しく実施することで、長期間にわたる安定した血糖管理が可能となります。
「糖尿病」と「インプラント」に関するよくある質問
最後に、糖尿病とインプラント治療に関するよくある質問についてお答えします。
糖尿病だとインプラントは絶対にできませんか?
糖尿病をお持ちの方でも、インプラント治療をすることは可能です。ただし、絶対的な条件として挙げられるのが、「血糖値が安定していること」です。
血糖値が高すぎると治療の成功に影響を及ぼす可能性があり、リスクを伴います。そのため、まずは医師の指導の下で血糖値を適切な範囲に安定させることが大切です。
糖尿病のインプラント治療の成功率は低いですか?
糖尿病だからといってインプラント治療の成功率が必ずしも低くなるわけではありません。重要なのは、適切な治療計画とケアの実施です。
血糖値のコントロールと口腔内の健康管理をしっかり行うことで、成功率は糖尿病でない方とほぼ同等になることが多いでしょう。
しかし、これが不十分だと感染のリスクが高まり、成功率が下がる可能性があるため、個々の健康状態に応じた対策を講じることが重要と言えます。
糖尿病の場合、インプラント治療費用は通常と異なりますか?
基本的なインプラント治療の費用は、糖尿病の有無にかかわらず基本的な料金体系は変わりません。ただし、糖尿病の状態によっては追加の検査や特別な処置が必要になることもあります。
その結果、費用が増えることがあるため、治療を計画する際には歯科医師と相談し、見積もりを確認しておくことが大切です。
糖尿病の場合、インプラント治療後に気をつけることはありますか?
インプラント治療後に気をつけるべき最重要ポイントは、口腔内の清潔さを維持することです。毎日の歯磨きに加えて、歯間ブラシやデンタルフロスでインプラント周囲の汚れを徹底的に取り除く習慣をつけましょう。これにより、感染予防や歯周病のリスクを抑えられます。
また、定期的に歯科医院で検診を受け、インプラントの状態を適宜チェックしてもらうことも重要です。自己管理とプロのケアの両立でインプラントを長持ちさせましょう。
糖尿病でも安心で納得のインプラント治療を
糖尿病を患っているすべての方がインプラント治療を受けられないというわけではなく、血糖値のコントロールを行うことで、糖尿病を患っている方でもインプラント治療が可能になるケースは十分あります。
また、糖尿病の方にとってインプラント治療はリスクを伴いますが、事前に対策を講じることで安全に治療を行い、安心してインプラントを使用し続けることも可能です。そのため、糖尿病だから…と諦めず、まずはかかりつけ医や歯科医師に相談してみましょう。
糖尿病でインプラント治療を検討されている方は、ぜひ高田歯科クリニック(杉並区荻窪)へお気軽にご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2025年2月3日