インプラント手術後の抜糸タイミングはいつ?術後の注意点もご紹介
インプラント治療はその日に終わるものではなく、1次手術や2次手術、抜糸、待機期間、人工歯の装着など、様々な工程によって治療期間も長くなりがちです。
本記事では、インプラント手術における抜糸について詳しく解説。安心してインプラント治療を進めるためにも、抜糸のタイミング、抜糸するまでの気を付けるポイントを深く理解しましょう。
これからインプラント治療を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- インプラント手術後の抜糸のタイミングは、約7日~10日後が目安
- インプラントの縫合に使われる糸の種類は、「ナイロン糸」「絹糸(シルク)」「吸収性糸」の3種類
- 縫合する理由は、「感染症予防」「インプラントの結合を促進」「周囲の歯や骨への影響を抑える」が挙げられる
インプラント手術後~抜糸までの注意点
- うがいをしすぎない
- なるべく糸に触らない
- 長時間の入浴は避ける
- 激しい運動は控える
- 患部への刺激を極力抑える
- 食事において辛い物・硬い物は避ける
- 飲酒や喫煙をしない
- 処方された薬は忘れず服用する
- 患部を避けて優しく歯磨きする
- 痛みが腫れが続くようなら早めに歯科医院へ相談する
インプラントの術後~抜糸までの流れ
まず最初に、インプラント治療全般(インプラント手術〜人工歯の装着まで)の流れについて大まかに説明します。
①インプラント1次手術
局部麻酔後、施術箇所である歯茎を切開し、ドリルで穴を開けてインプラント体を埋入します。埋入後、一度歯茎を縫合し、傷口の治癒と骨の回復を待ちます。
②待機期間
インプラント体と顎の骨が結合するのに、数ヶ月ほど期間を空けます。
この間、患部に過度な力が加わらないよう注意が必要です。
③抜糸
切開した部分がしっかり閉じ、傷口の状態が落ち着いたら抜糸を行います。
※縫合後、7日~10日程度で抜糸を行うのが一般的です。
③インプラント2次手術
2次手術では再度歯茎を切開し、埋入したインプラント体を露出させた状態でアバットメント(インプラント体と人工歯をつなぐ部分)を装着します。その後、人工歯の型取りを行います。
※インプラントの手術法には、1回法と2回法があり、1回法であれば1回の手術でアバットメントまで装着できるため2次手術を行う必要はありません。
④人工歯装着
完成した人工歯を噛み合わせなどを調節した上で装着したら、インプラント治療は終了です。
歯茎を切開するタイミング
1次手術で行うインプラント埋入の際に、まず歯茎を切開する処置が必要となります。また、2次手術を行う場合は、再度歯茎を切開しなければなりません。
歯茎を切開する際は局部麻酔を行うため痛みはありませんが、外科手術となることから精神的・身体的負担を感じる方もいるでしょう。また、切開部分は傷口となるため、手術後に痛みを伴うことがあります。
歯茎を縫合するタイミング
インプラントの1次手術の際に、インプラントを埋入した後、一度歯茎を縫合します。
縫合することで細菌や食べかすなどが侵入するのを防ぎ、感染のリスクを軽減することができるのです。
抜糸のタイミング
インプラントの1次手術後、インプラント埋入箇所の傷口が回復してきたのを確認できたら抜糸を行います。タイミングとしては、手術後7日~10日程度が一般的で、歯科医師からも来院のタイミングを伝えられるでしょう。
長期間、縫合糸をつけたままにすると汚れが付着し、かえって感染症のリスクを高める可能性もあるため、歯科医師の指示に従うことが重要です。
インプラント手術で使われる糸の種類
インプラント手術で歯茎を縫合する際に使用する糸には、下記の3種類があります。
- ナイロン糸
- 絹糸(シルク糸)
- 吸収性糸
それぞれのメリット・デメリットについて、詳しく解説します。
ナイロン糸
ナイロン糸は、汚れが付着しづらいという特性を持つため、特に奥歯のように汚れがたまりやすい部分の縫合に適しています。この特性により、感染リスクを軽減することができるため、インプラント手術後の安全性を高めることができます。
しかし、ナイロン糸は素材が硬いため、使用時に不快感や異物感を感じることがあるのがデメリットの一つです。そこで最近では、柔らかいソフトナイロン製の糸も選ばれることがありますが、このタイプは緩みやすいという注意点があります。
絹糸(シルク糸)
絹糸は、柔らかさが最大のメリットです。術後の違和感が少なく、多様な部位に使用できるためインプラント手術に限らず多くの手術で選ばれています。
また、絹糸は緩みにくい特性を持ち、しっかりと傷口を縫合することが可能です。ただし、汚れが付着しやすく、唾液や歯垢を吸収すると糸の色が変色することも。
このため、絹糸を使用した場合は決められた日に抜糸を行うことが重要です。長期間放置することは感染症のリスクを増加させる要因となるため、適切な管理が必要です。
吸収性糸
吸収性糸は、抜糸のために再度通院する必要がない点で非常に便利です。グリコール酸や乳酸など、人体に無害な素材で作られており、縫合後3~4週間で体内に自然に吸収される仕組みです。
このため、吸収性糸は遠方で治療を受ける方や、時間が確保できない方に適しているでしょう。しかし、吸収性糸は他の糸に比べて強度が低く、治療内容によっては使用が難しい場合があります。そのため、治療方針を担当医と相談しながら決めることが重要です。
インプラント埋入後に歯茎を縫合すべき理由
インプラント手術後に歯茎を縫合することは、術後の経過を良好に保つために非常に重要です。歯茎を縫合すべき理由は、具体的に以下の3つが挙げられます。
- 感染症予防のため
- インプラントの結合を促すため
- 周囲の歯や骨への影響を抑えるため
感染症予防のため
インプラント手術後は歯茎を縫合することにより、細菌感染を防ぐことができます。口腔内には多くの細菌が存在するため、縫合していない状態では細菌がインプラント周辺に侵入し、細菌感染を引き起こす可能性が高くなります。
感染が深刻化すると、インプラントを撤去せざるを得ない事態にもなりかねません。なお、術後の感染防止には、医師の指示に従った抗生物質の適切な服用と日常的な口腔ケアが重要です。こうした予防措置を徹底することで、手術後のリスクを大幅に軽減することが可能です。
インプラントの結合を促すため
インプラントの埋入後は、インプラント体が骨としっかり結合するための期間をおかなければなりません。手術後直後の歯根部分はまだ不安定であるため、縫合することでインプラントが正常に骨と結合するようサポートします。
術後の不注意からインプラントが揺れたりすると、骨との結合が妨げられ、最悪の場合にはインプラント治療が失敗に終わる恐れもあるため、歯茎の縫合が必要不可欠です。
周囲の歯や骨への影響を抑えるため
歯茎を縫合しないままだと、細菌の侵入によって歯茎が炎症を起こし、インプラントの部分だけでなく、隣接する健康な歯や骨に悪影響を及ぼす可能性があります。
歯茎を縫合することで手術部位が安定し、細菌感染のリスクも軽減できるため、周囲の歯や骨に過度の負担をかけることなく傷が治癒するようになります。
そのため、インプラントの周りの健康な歯や骨に悪影響を与えないためにも、歯茎を縫合しておくことが重要だと言えるでしょう。
傷口の治癒を促進し、痛みや腫れを抑えるため
インプラント手術後は、切開した部分を縫合することにより、傷口の治癒を促進し、痛みや腫れを抑える効果が期待できます。正しく縫合されていない場合、出血が増したり、腫れが長引いたりすることがあり、治癒が妨げられることになります。
また、傷口が正常に治癒しないと、治療全体の進行が遅れることがあるため、術後の経過が不安定な場合は早急に医師の診察を受けるようにしましょう。
インプラント治療後の抜糸タイミングの重要性
手術後に縫合された歯茎の傷口が治癒するまでの間、縫合糸が傷口をしっかりと固定してくれることで回復が促されます。
そのため、抜糸が早すぎると傷口が十分に癒えておらず、歯茎の再発を引き起こす可能性があります。一方、抜糸が遅れると、縫合糸が身体に異物として認識されるリスクが高まり、炎症や感染の原因となる可能性があります。
長期間の糸の存在は、歯茎に慢性的な刺激を与え、回復が遅れる一因ともなるのです。
このため、適切なタイミングでの抜糸が非常に重要です。
インプラント手術後~抜糸までの期間の注意点
インプラント手術後から抜糸までの期間は、非常に重要な治癒期間となります。
この期間中は傷口の治癒やインプラントと骨の結合など、次の治療に進むための土台を作る時期だからこそ、次に紹介する点に気を付けて過ごさなければなりません。
うがいをしすぎない
手術後の口内ケアは非常に大切ですが、過度なうがいは避けるべきです。強くうがいをすると、傷口にできた血餅(血液が固まったもの)が剥がれ、治癒を遅らせたり感染症のリスクを高めたりする可能性があります。
また、縫合した糸が外れたりする可能性もあるため、優しく、軽く口をゆすぐ程度にとどめましょう。うがい薬を使うのも効果的ですが、必ず医師の指示に従って正しく使用することが重要です。
なるべく糸に触らない
傷口を縫合している糸に触れることは、感染リスクを高める行為です。舌や指で糸を触ることで細菌が付着し、感染の可能性が高まります。
また、直接触ると糸が緩んだり外れたりすることも。傷口の保護と治癒を促進するために、糸にはなるべく触れないようにしましょう。食事や歯磨きの際も、糸や傷口に刺激を与えないように気をつけてください。
長時間の入浴は避ける
手術後は体温を上げるような行為を避けることが大切です。長時間の入浴は体を温め、血流を良くするため、傷口の出血を誘発する可能性があります。
抜糸までの期間は、湯船に浸かる時間を短くし、シャワーに留めるようにしましょう。
激しい運動は控える
術後は激しい運動を控えて安静に過ごすことが重要です。運動により全身の血流が活発になると、出血が促され、傷口に余分な負担がかかる恐れがあります。
特に労働や運動によるストレスは手術部位への影響が大きいため、可能な限り避けましょう。日常生活での負担を減らし、体をしっかり休めながら、術後の回復を目指すことが大切です。
患部への刺激を極力抑える
手術後は患部を刺激しないように特に注意が必要です。歯ぎしりや食いしばりなど、日常的に無意識で行ってしまう習慣がある方は、傷口やインプラントに直接的な負担をかけ、治癒を妨げる可能性があります。
場合によっては、マウスピースなどを使用してこれらの癖を抑制することが推奨されるため、まずは歯科医師と相談して決めましょう。
食事において辛い物・硬い物は避ける
手術後の歯茎は非常に敏感な状態にあるため、食事には気を付けなければなりません。辛い食べ物や硬い食材を摂取すると、治療した部分に刺激を与えてしまう可能性があり、炎症や感染のリスクが高まります。
例えば、硬いおせんべいやスルメ、スパイシーなカレー、ハード系のパンなどは控えるべきです。スープやヨーグルト、おかゆなど柔らかくて刺激の少ない食事を心がけましょう。
飲酒や喫煙をしない
飲酒や喫煙は、手術後の回復を妨げる主要な要因となり得ます。アルコールは血行を促進し、出血を引き起こしやすい状態にするため控えましょう。
一方、喫煙もニコチンの影響で毛細血管が収縮し、血行不良を引き起こすことで傷の治癒を遅らせます。これにより感染リスクも高まるため、できる限り禁煙するよう心がけましょう。これらの行動は、体内の回復能力を最大限に引き出すために重要です。
処方された薬は忘れず服用する
インプラント手術後には、感染防止や痛みを抑えるために医師から処方された薬を正確に服用することが重要です。抗生剤は感染を防ぐためであり、決められた時間に必ず飲むようにしましょう。
また、鎮痛剤は痛みがある時に使用しますが、使用間隔の目安を守り服用することが大切です。飲み忘れたり、自己判断で服用の頻度を変えたりせず、必ず医師の指示に従ってください。
患部を避けて優しく歯磨きする
術後の口腔内のケアは、歯磨きの際に患部を刺激しないよう注意を払う必要があります。柔らかめの歯ブラシを使用し、優しく磨くことで、歯茎や手術部位への負担を減らすことができます。
特に縫合部分への直接の刺激は避けつつ、専用のうがい薬によるケアを丁寧に行い、お口の清潔を保ちましょう。歯磨き粉は刺激の少ないものを選び、マウスウォッシュの使用も控えるのが望ましいです。
痛みや腫れが続くようなら早めに歯科医院へ相談する
術後に多少の痛みや腫れがあるのは通常の反応ですが、これらの症状が長引く場合は注意が必要です。抜糸のタイミングまでに改善が見られない場合、感染症を引き起こしていたり、治癒過程に問題があったりする可能性があります。
特に強い痛みや頻繁な出血が続く場合は、自己判断で処置を試みるのではなく、速やかに歯科医院を訪れ診察を受けましょう。適切な医療を受けることが、長期的な健康を守るために不可欠です。
「インプラント 抜糸」に関するよくある質問
インプラントの抜糸についてよくある質問をまとめました。インプラント治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
インプラントの一回法で抜糸はいつですか?
インプラントの一回法での抜糸は、手術後7日~10日程度で行うことがほとんどです。これは、傷口が正常に治癒するのにかかる一般的な期間です。早すぎても切開した部分が上手く閉じず、遅すぎても汚れの付着によって炎症を引き起こす場合もあります。
なお、傷口の状態によっては10日以上空けて経過をみることもあるため、適切なタイミングは歯科医師に委ね、それまではしっかりと通院するようにしましょう。
インプラント抜糸後の食事で気を付けることはありますか?
抜糸した後、歯茎の状態は比較的落ち着いていますが、インプラント体と顎の骨が結合するのには抜歯後3ヶ月~6ヶ月程度の期間が必要です。
骨の状態が安定しないまま過度な負担が加わると、インプラント体と骨の結合が妨げられ、インプラント治療が失敗に終わってしまう可能性が高くなります。そのため、抜歯後であってもインプラントが安定するまでは硬い食べ物は避けるようにしましょう。
インプラントの抜糸後、歯磨きはできますか?
インプラントの抜糸後は、普段通り歯磨きをしても大丈夫です。インプラントの治療中は、特に感染症に気を付けなければなりません。そのため、インプラント箇所を含め、周りの歯も丁寧に優しく磨くことを心がけましょう。
なお、インプラント手術後は磨き方や使用する歯磨き粉など気を付けるべきことがあるため、磨き方の指導を受け、使用する歯ブラシや歯磨き粉などを歯科医師へ確認しましょう。
インプラントの縫合糸が取れたらどうしたらいいですか?
縫合糸が気付かないうちに取れてしまった場合には、速やかに歯科医院へ連絡し、状態を確認してもらいましょう。傷口がすでに治りつつある場合は、糸が外れたままで問題ないこともありますが、治癒が完了していない場合は再度縫合が必要となります。
傷口がしっかりと治っていないのに放置すると、感染や治りの遅れを引き起こすため、注意が必要です。
抜糸時に痛みはありますか?
抜糸時は、歯茎を引っ張られる感じやチクチクとした感覚があり、それを痛みとして感じる方もいます。なお、我慢できないほどの強い痛みではないため、基本的に麻酔を使用することはありません。
もし、痛みに弱い方や痛みに対して恐怖感がある方は、事前に歯科医師へ相談し、麻酔をしてもらうようにしましょう。
インプラント治療に関する疑問・不安は高田歯科クリニックへご相談を!
インプラント治療は、失った歯を補う治療法の一つであり、天然歯とほとんど変わらない見た目や噛み心地を回復できるのが魅力です。ただし、外科手術を伴うため、治療が完了するまでは様々な工程があり、気を付けるべきポイントも多々あります。
今回はインプラント治療の中でも、主に抜糸について詳しく解説してきましたが、抜糸までの間に注意すべき点を理解し、適切なタイミングで抜糸を行うことで、安心安全に治療を進めることができるでしょう。
高田歯科クリニック(杉並区荻窪)では、患者様が納得し、安心してインプラント治療を進められるよう、カウンセリングや治療計画の説明など、不安が解消できるようご相談の時間をしっかりと設けています。
インプラント治療を検討されている方で、疑問や不安な点がありましたら、ぜひ当院へお気軽にご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2025年3月4日