即時荷重インプラントが可能な条件は?メリット・デメリットや費用も解説
インプラント治療は、歯を失った場合でも本物の歯のような見た目、そして噛み合わせを回復できる優れた治療法です。
ただ、顎の骨にインプラント体を埋め込んでから数ヶ月もの間、骨とインプラント体の結合を待つ必要があり、従来その期間は仮歯でさえ入れることができませんでした。そこで開発されたのが、即時荷重インプラントです。
本記事では、即時荷重インプラントの基礎知識やメリット・デメリット、適応条件や費用をご紹介していきます。
-即時荷重インプラントが可能な条件-
- 顎の骨に十分な高さや幅、奥行きがあること
- 骨質が良好であること
- 初期固定をしっかり行えること
- 定期的なメンテナンスに通えること
- 歯ぎしりなどの癖がないこと
インプラント治療を検討されている方はぜひ参考にしてください。
即時荷重インプラントとは
即時荷重インプラントとは、歯がない期間が生まれる通常のインプラント治療のデメリットをカバーできる治療法です。
即時荷重インプラントについて、また通常のインプラントとの違いや治療の流れを見ていきます。
通常のインプラント治療と即時荷重インプラントの違い
通常のインプラント治療では、顎の骨とインプラント体が結合するまでは歯がない期間が存在します。
3~6ヶ月程度歯がない状態で過ごすことになるため、食事や会話が思うように出来なかったり、見た目を気にするのがストレスになったりするといったデメリットがあります。
一方、即時荷重インプラントは、一定の条件が整えばインプラントを埋め込んだ後にアバットメント(人工歯の土台)と仮歯を手術当日に装着することが可能です。
手術したその日に仮歯が入るため、歯がない期間を過ごす必要がありません。見た目を気にせず過ごすことができます。
ただし、即時荷重インプラントは、すぐに噛む機能を完全に回復できるものではなく、審美面や発音のしにくさを補うためのものです。
柔らかい食べ物なら手術当日から噛むことはできますが、やはりこれまでと全く同じように食事ができるわけではないことには注意しましょう。
「抜歯即時インプラント」との違い
抜歯即時インプラントとはその名の通り、歯を抜いたその日にインプラントを埋め込む治療法です。従来のインプラント治療では、抜歯後に骨が治癒するのを待ってからインプラントを埋め込むため、治療期間が長期間かかる場合がありました。
しかし、抜歯即時インプラントでは、抜歯窩(歯を抜いてできた穴)の形状や骨の状態を考慮してインプラントを埋め込むため、この期間を短縮することができます。即時荷重インプラントとの違いは以下の通りです。
特徴 | 即時荷重インプラント | 抜歯即時インプラント |
---|---|---|
定義 | インプラント埋入直後に仮歯を装着できる | 抜歯と同時にインプラントを埋入できる |
主な利点 | 早期の機能回復と審美的回復 | 骨吸収の抑制と治療回数の減少 |
適用条件 | 良好な骨の質と量、初期固定がしっかりしているなど | 良好な骨の質と量、感染や病変がないなど |
主なリスク | 初期固定が不十分だと失敗のリスクがある | 抜歯部位の状態によっては適用が難しい |
適用する部位 | 審美的に重要な部位(前歯部など) | 骨がしっかりしている部位、特に抜歯が必要な場合 |
即時荷重インプラントが審美的な要求が高い患者様や、早期に機能回復を希望する患者に適しているのに対し、抜歯即時インプラントは治療期間の短縮や骨の保持を重視する場合に適用されるのが一般的です。
即時荷重インプラントの治療の流れ
即時荷重インプラントの治療のおおまかな流れは以下の通りです。(※骨の状態などによって多少異なる可能性があります。)
①精密検査・診断
模型(歯型)を取り、口腔内調査およびレントゲン撮影、CT検査を行い、お口の中の状態を正しく把握します。その結果をもとに、インプラント体を埋入する位置や本数、治療の具体的な手順を検討します。
②治療計画のご説明
治療計画を立て、患者様に理解・同意していただく説明を行ったうえで治療方針を決定します。
③インプラント埋入手術
インプラントを埋める手術の流れは以下の通りです。
- 1. 局所麻酔
- 2. 患部の抜歯
- 3. 歯茎の切開
- 4. 顎の骨の形成(インプラントを埋め込む穴をあける)
- 5. インプラントの埋入
- 6. 縫合
- 7. 仮歯用の歯型をとる
- 8. 仮歯をセット、噛み合わせのチェック
即時荷重インプラントの6つのメリット
ここからは、即時荷重インプラントがもたらす6つのメリットを見ていきます。
食事や会話など日常生活における支障を抑えられる
即時荷重インプラントではインプラント体の埋入と同日に仮歯を入れるため、食事や会話への支障を最小限に抑えられます。即時荷重インプラントでは硬いものを避ければ手術当日から噛むことも可能。
ただ、手術後すぐに食事はできますが、インプラント体を埋入した部位にあまり強い負荷をかけてしまうと治りが悪くなったり、痛みが出たりする可能性が高まるため注意が必要です。
見た目も気にならない
即時荷重インプラントは、インプラント手術と同時に仮歯を入れることができるため、見た目を気にする方にとっては大きなメリットとなります。
歯がないまま、もしくは入れ歯で過ごす必要ないため、人前に立つ職業の方や人と接する機会が多い方、すぐに治療を終わらせたい方にも最適です。
身体への負担が少ない
即時荷重インプラントは外科手術を1回しか行わないため、手術に伴う痛みや腫れも最小限に抑えられます。その分、身体的・精神的な負担を軽減できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
通常のインプラントでは2回に分けて手術を行う2回法という方法が一般的です。2回法では感染症のリスクやインプラントの脱落リスクを抑えられるなどのメリットがありますが、複数回手術を行うことで少なからず患者様の負担となります。
治療期間が短く通院回数が少ない
即時荷重インプラントは、インプラント体を埋入する手術と同時に仮歯を入れられることから、通常のインプラントと比べて治療期間が短く、通院回数も少なく済みます。
仕事や子育てなどで通院のための時間が取れない方でも、無理なく治療を受けられるでしょう。
インプラントのトータル費用を抑えられる
前述した通り、即時荷重インプラントは手術回数と通院回数が通常に比べて少なく済みます。手術の回数が減るということはつまり、手術にかかる費用が減るということです。
通常のインプラント治療よりも総合的な費用を抑えられます。インプラント治療は基本的に保険が適用されないため、少しでも費用を抑えて治療を受けられるのは大きなメリットとなるでしょう。
顔の変化を防げる可能性がある
歯を失った状態が長期間続くと、その部分で噛まなくなることにより口周りの表情筋肉が衰え、顎の骨の量が減少します。その結果、ほうれい線が深くなる、しわやたるみができるといった変化が起き、顔が老けた印象になることがあるのです。
その点、即時荷重インプラントでは手術と同時に仮歯を入れるため、硬いものを避ければその日に噛むことができます。噛むことで筋肉が発達し、顎の骨に刺激が伝わるため、顔の変化も防げる可能性があるでしょう。
即時荷重インプラントのデメリット
即時荷重インプラントのデメリットも頭に入れておきましょう。
治療時間が長い
通常のインプラント手術の所要時間は、一般的には1本あたり30分程度です。また、インプラントを埋め込む手術の前に、骨を増やす骨造成の処置が必要な場合は1時間程度の手術時間が目安です。
しかし、即時荷重インプラントはインプラント体の埋入だけではなく、アバットメント、仮歯の装着を1回の手術で行います。
そのため、通常のインプラント治療と比べると手術にかかる時間は長くなるでしょう。それにより心身への負担が大きくなってしまいます。
ただし、手術回数・通院回数は少なくなるため、一概に心身への負担が大きいとは言い切れません。
一定期間の食事制限がある
即時荷重インプラントでは手術当日に噛むことができますが、必要以上の負荷をかけないために、一定期間の食事制限があります。
インプラント体と顎の骨が結合するまでは硬いものは避けなければなりません。また、インプラントが骨と結合していても仮歯は破損する場合があります。人工歯を取りつけるまでは食事制限があることを理解しておきましょう。
インプラントが動いてしまうリスクがある
即時荷重インプラントではすぐに仮歯を装着することができますが、インプラント体と顎骨がすぐに結合するわけではありません。
インプラント体が骨に結合するためには一定の期間が必要です。このため、完全に結合していない間に、無理な負荷がかかるような食事や、歯ぎしり食いしばりによってインプラントが動いてしまうことがあります。
場合によっては埋入のやり直しが必要になったり、最悪の場合インプラントが抜けてしまったりすることもあるでしょう。特に、歯ぎしりや食いしばりなど歯に負荷がかかる癖がある方は注意が必要です。
即時荷重インプラントをできない場合がある
即時荷重インプラントはメリットの多い治療法ですが、インプラントを埋め込む箇所の骨の状態によっては即時荷重インプラントが選択できない場合があります。
骨が柔らかい方や薄い方、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方、基礎疾患や喫煙習慣がある方は治療制限を受けることがありますので、まずは歯科医院で相談してみましょう。
対応可能な歯科医院が限られている
即時荷重インプラントは高度な技術や治療環境が必要になるため、どこの歯科医院でも受けられるわけではありません。
通常のインプラント治療を行っていても、即時荷重インプラントには対応していない歯科医院もあります。
ただ、以下の基準を満たしていれば即時荷重インプラントを受けられる可能性が高いため、ホームページ等でチェックしてみましょう。
- インプラント認定医の資格を持っている
- インプラント学会に所属している
- 抜歯即時インプラント治療の経験がある
リスクがあることも知っておく
即時荷重インプラントに限ったことではありませんが、インプラント治療には少なからずリスクがあることも知っておきましょう。
- 外科手術を実施するため、術後に痛みや腫れといった症状が出る場合がある
- 血管損傷・神経麻痺のリスクが伴う
- 上顎洞炎を引き起こす
- インプラント体と顎の骨が上手く結合しない
- インプラント周囲炎になる
- 骨量が不足している方は、別途の処置が必要
即時荷重インプラントが可能な条件
ここからは、即時荷重インプラントが可能な主な条件を見ていきます。
顎の骨に十分な高さや幅、奥行きがあること
インプラント治療ではインプラント体をしっかりと固定するために、顎の骨に十分な幅と高さ、量が必要となります。これらの骨の状態が良好であることが治療の成功の第一条件です。
近年、歯科用CTを使用することで、骨の厚みや密度などの詳細な計測ができるようになり、より安全で高度な治療が可能となりました。
骨質が良好であること
インプラントを埋入する箇所は、初期固定が得られるための良質な骨であることが必要です。骨の厚みが十分にあり、かつ骨の質がしっかりとした硬い骨でなければなりません。
柔らかい骨だと初期固定が得られないため、インプラントを埋め込もうとする場所の骨がどのような状態にあるのかを、事前にしっかりと調べておく必要があります。また、顎骨の質とともに、骨密度が十分にあることも重要です。
初期固定をしっかり行えること
即時荷重インプラントは、初期固定が得られることが必須となる治療法です。初期固定とは、顎の骨とインプラントがしっかり固定され、動揺(ぐらつき)がないことを言います。
前述した通り、骨質が良好な状態であることが条件のひとつとなり、初期固定が難しいと判断されれば即時荷重インプラントを受けることはできません。
もしインプラント体を埋め込む穴の大きさとインプラントの太さの差が大きい場合、インプラントを安定させることが難しくなるため、サージカルガイド(マウスピースのような形をした装置)を使用した精密な治療法が用いられることがあります。
定期的なメンテナンスに通えること
術後も定期的にメンテナンスに通えることもひとつの条件です。というのも、インプラント治療後は、「インプラント周囲炎」にかかりやすいと言われているからです。
インプラント周囲炎とは、インプラントの周辺組織が歯周病に感染した状態のことを言います。インプラントは天然歯に比べ抵抗力が弱いため、一度周囲炎にかかると症状が急速に進んでしまいます。
症状が悪化すると、インプラントを支えている骨が溶け、最終的には脱落する恐れもあるのです。そうならないためにも定期的なメンテナンスが必須となります。
歯ぎしりなどの癖がないこと
インプラント体が骨にしっかり結合するためには一定の期間が必要です。
もし、歯ぎしりや食いしばりなどの癖があると、インプラントに過大な負担がかかり、インプラントが動いてしまったり、破損したりする可能性があり、被せ物が割れることもあるでしょう。
そのため、このような癖がある方は、即時荷重インプラントが適しているとは言い難いです。なお、歯ぎしりや食いしばりをしているかは自分では気づきにくいため、歯科医院で見てもらうのが確実です。
即時荷重インプラントの治療期間・回数
骨の状態によってはインプラントの手術をして、噛めるようになるまでの時間が大幅に短くなっています。
通常、インプラントを埋め込んだ際には、インプラントと顎の骨が結合するための期間を3~6ヶ月程度とりますが、即時荷重インプラントの場合は、その日のうちに仮歯まで装着できる場合があり、大幅に全体の治療期間、通院回数を少なくすることができます。
即時荷重インプラント治療にかかる費用相場
即時負荷インプラント治療にかかる費用の相場は、平均すると1本につき30~50万円程度です。ただし、自費診療(全額自己負担)のため、歯科医院によって費用が大きく異なります。
前歯の場合は、審美性を高めるために、人工歯により良い素材を使うことも多く、少し相場よりも高くなることがあります。また、顎骨が不足している場合は骨造成を行うためさらに費用が上がるでしょう。
安いからといって治療費用だけで治療する歯科医院を選ぶのは大変危険です。これから半永久的に付き合っていくインプラントだからこそ、安全と安心を考え、信頼できる歯科医師のもとで治療を受けましょう。
即時荷重インプラントをお考えなら高田歯科クリニックへ
即時荷重インプラントは、インプラント埋入手術を行ったその日に仮歯まで装着することができるため、食事や発音のストレス軽減や見た目を気にすることなく過ごすことが可能です。
即時荷重インプラントをご希望の方、インプラント治療でお悩みの方やご不明点がございましたら、まずは一度当院「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」にご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2024年7月3日