インプラントが取れたらどうする?対処法や注意点、歯医者でかかる費用の相場を解説
インプラントは、失った歯を自然な形で補いたい方にとって、有効な治療法の一つです。しかし、治療後、何らかの原因によってインプラントがゆるんだり、取れてしまったりと、トラブルが起きることも稀にあります。
そうした事態が起こった場合、慌てず適切な応急処置を施すことが大切ですが、急な状況にどのように対応したらいいか分からないこともあるはずです。いざというときでも落ち着いて対応できるよう、対処法を知っておくのがよいでしょう。
本記事では、インプラントが取れる原因や取れたときの対処法や治療法、応急処置における注意点、歯医者でかかる費用について詳しく解説します。
インプラントが取れたときの対処法・注意点
- 取れたインプラントを清潔に保管する
- 歯科医院に連絡し指示を仰ぐ、放置せずできる限り早く受診する
- インプラントが取れた歯に負担をかけないように注意する
- 被せ物や口の中を過剰に触るのはNG
- 自分で無理に戻さない
詳しくは本記事内でご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
【部分別】インプラントが取れる・外れる原因は?
インプラントが取れる・外れる原因はさまざまです。また、どの部分が外れたかによっても原因は異なります。
部分別の原因を見ていく前に、まずはインプラントの構造をおさらいしましょう。
インプラント構造のおさらい
インプラントは、失った歯の代わりに埋め込まれ、人工の歯根として機能します。構造としては、主に以下の3つの部位から成り立っています。
- インプラント体(人工歯根)
- アバットメント
- 人工歯(上部構造・被せ物)
顎の骨に埋め込まれる「インプラント体」はチタン製で骨と結合して安定した土台を作り、インプラント体と外に見える人工歯を繋ぐのが「アバットメント」という部分です。
また、アバットメントに装着されるのが「上部構造」、つまり見た目でいう「歯」の部分です。
これらのどの部分が抜けた、壊れた、取れたかによって原因が異なるため、ここからは具体的に部位ごとの原因を見ていきましょう。
「インプラント体(人工歯根)」が外れる・抜ける原因
インプラント体が外れる、または抜ける原因の代表的なものには、
- 適切でない治療・手術(衛生面の問題による細菌感染や歯科医師の技術不足等)
- 骨とインプラント体の結合不足
- 使用しているインプラントの品質(低品質)
- 術後の管理不足による・口腔衛生の悪化
- 全身疾患
などが挙げられます。
特に、数ヶ月で抜けてしまった場合は、顎骨とインプラント体が結合していないことが原因であることが多い傾向にあります。一方、数年経ってからインプラント体が外れたという場合は、「インプラント周囲炎」などのトラブルが考えられます。
このインプラント周囲炎は、歯茎の炎症や腫れなどの症状から始まり、歯茎が膿んだり、骨吸収(=骨が溶ける)で骨との間に隙間ができてインプラントがぐらついたり、抜け落ちたりしてしまうことがあるのです。
3つの部位の中でもインプラント体が抜けることは、インプラントにおけるトラブルの中でも最も深刻なものとされています。
「アバットメント」が取れる原因
インプラント体と人工歯を繋ぐ部品であるアバットメントが取れる原因は主に、
- インプラントのアバットメントがきちんと固定されていない、ネジにゆるみや破損がある
- 長期間の使用による素材の劣化
- 噛み合わせの問題(インプラント部分に過度に力が加わる)
- 患者様の口腔内の衛生状態が良くないこと
などが考えられます。
インプラント体とアバットメントはネジで固定されていますが、このネジに日々負担がかかると、ネジが緩んでしまったり、破損してしまったりすることがあります。また、その根本には噛み合わせの問題も隠れていると考えられます。
「人工歯(上部構造/被せ物)」が取れる原因
人工歯が外れてしまったり、人工歯自体が破損し、欠けたり割れたりしてしまうケースがあります。人工歯が取れる原因は、主に以下の通りです。
- ネジの締め付け不足(スクリュー式の場合)
- 人工歯の経年劣化(平均寿命は10年程度)
- 噛み合わせの問題
- 歯ぎしりや食いしばりなどの癖による過度な負担
- 虫歯や歯周病
- 上部構造を接着しているセメントの劣化(セメント式の場合)
インプラントが取れたらどうする?部位ごとの対処法・治療法
ここからは、インプラントが取れた場合の対処法(部位別)や、歯科医院における治療法について紹介します。万が一の事態に備えて事前に頭に入れておきましょう。
インプラントの「どこ」が取れたか確認する
どの部位(パーツ)が取れたのかによって原因が変わるように、対処法も異なります。そのため、まずは取れたもの、抜けたものを確認しましょう。
早速、部位ごとに対処法・治療法を見ていきます。
「インプラント体」が外れた場合の対処法・治療法
インプラントが抜けてしまった場合は、インプラント付近の歯周組織や顎の骨の状態が悪い状態が考えられます。1日も早く歯科医院で診察を受け、適切な処置を受ける必要があります。抜けてしまったインプラント体を再度埋め込むのか、またはブリッジや入れ歯にするのか、口腔内の状態によって治療法が決定されます。
また、噛み合わせの異常が起きている場合は、インプラントと周りの歯の高さをチェックし、噛み合わせを調整する治療なども必要となることがあるでしょう。
のちほど詳しく説明しますが、抜けたインプラントは、患者様ご自身で元に戻すことは絶対にNGです!また、インプラント体が外れているということは、アバットメントや人工歯などすべての部位が外れているため、再利用のためにも必ず保管しておきましょう。
「アバットメント」が取れた場合の対処法・治療法
アバットメントが取れた場合は、必然的に人工歯も抜けている状態です。インプラント体がむき出しになっているため、早急に歯科医院を受診しましょう。
インプラントの状態を確認し、緩んでいる、外れている場合にはアバットメントを締め直します。アバットメントの締め直しは比較的簡単な処置のため、短時間で済ませられることが多いでしょう。
ただ、アバットメントが折れている場合は、新しいパーツに取り替えなければならなくなることもあります。さらに、噛み合わせの異常によるトラブルだと分かれば、噛み合わせを調整する処置・治療が行われることもあるでしょう。
「人工歯」が取れた場合の対処法・治療法
人工歯が取れた場合は、比較的対処がしやすいものですが、欠けたり破損してしまったり、急に取れて紛失してしまったりした場合は、人工歯の作り直しとなります。いずれにしても早めに歯科を受診しましょう。
また、取れた場合も破損があった場合も、人工歯を失くさないよう保管してください。加えて、むき出しになったアバットメントやインプラント体には触らない、自分で戻そうとしないようにしましょう。
インプラントが取れたときの応急処置と注意点5つ
インプラントが取れたまま放置をしておくのは絶対にNGです。以下の応急処置や注意点を頭に入れ、素早く行動しましょう。
- 取れたインプラントを清潔に保管する
- 歯科医院に連絡し指示を仰ぐ、放置せずできる限り早く受診する
- インプラントが取れた歯に負担をかけないように注意する
- 被せ物や口の中を過剰に触るのはNG
- 自分で無理に戻さない
ただし、これらの応急処置は一時的なもの。何より歯科医院での早期の治療が重要です。
取れたインプラントを清潔に保管する
インプラントのパーツが取れた場合は、衛生的かつ力がかかっても破損しない方法で保管しましょう。トラブルの原因の判断材料になるかもしれませんし、状態が良ければ再利用することもでき、期間・費用をかけずに治療が可能だからです。
保管方法としては、プラスチックケース(食品用タッパーや旅行用のクリームの容器など)や、ジッパー付きの密閉式保存袋などが最適でしょう。変形・破損がないように、可能な限りある程度硬さのある容器に保管しておくと安心です。
ティッシュや紙で包んで保管してしまうと、ご家族の方などが誤って捨ててしまう可能性があるうえ、外部からの衝撃で変形することもあるため控えましょう。
歯科医院に連絡し指示を仰ぐ、放置せずできる限り早く受診する
インプラントのいずれかのパーツが取れたら、かかりつけの歯科医院へ連絡し、予約をしましょう。その際、状況の把握や治療がスムーズにいくよう、
- いつ取れたか?
- どのようなときに取れたか?(取れた原因やきっかけ)
- 口腔内の状況(他にトラブルがないか)
- 以前から取れそうな感覚があったか?(何日か前からグラグラしていた、など)
聞かれそうなポイントをメモしておき、正確に伝えましょう。具体的に伝えられれば、歯科医院側も適切な対処がしやすくなります。
また、受診までの期間もできるだけ不安なく過ごせるよう、気を付けるべき点などの指示を仰ぐとよいでしょう。
何より、インプラントが取れたまま放置すると、さらに治療が難しい状態になったり、細菌感染のリスクも高まったりするため、一刻も早く歯科医院へ連絡・受診をしてください。
インプラントが取れた歯に負担をかけないように注意する
歯科医院に行くまで、インプラントが取れた箇所に負担をかけないよう、以下のポイントに注意しましょう。
- 硬いものは控える
- 取れた歯の反対側の歯で噛むようにする
- 歯磨きも優しくブラッシング
取れたインプラントや口の中を過剰に触るのはNG
保管している取れたインプラントは、清潔に保管するためにも触らないようにしましょう。
また、口腔内に残った部分が気になって、触ってしまいたくなることがあるかもしれませんが、触ると細菌感染のリスクが高まります。そのため、手や舌で触るのは絶対に控えましょう。
自分で無理に戻さない
絶対にNGなのが、「自力で元に戻そうとする行為」です。瞬間接着剤でくっつける、無理に押し込んで埋め込むなど、個人の判断で処置するのは絶対に控えてください。
不衛生な状態でそのような処置を行うと、細菌感染のリスクが高まるとともに、破損したパーツで口腔内が傷つくこともあります。
また、患者様自身には見えなくても、インプラント体が骨と結合していなかったり、アバットメントが折れてしまったりしている可能性も否めません。分からない状態で素人が無理やりはめ込むのは大変危険ですから、必ず歯科医院で適切な処置をお願いしましょう。
インプラントが取れたときにかかる費用(治療や修理費用)は?
インプラントが取れた場合、部位や状態によってかかる費用が変わります。
たとえば、アバットメントや人工歯が取れただけで破損がなかった場合は、取れた箇所を付け直すだけで済むことから、数千円程度の治療費用となるでしょう。保証期間内であれば無料の場合もあります。
一方、人工歯やアバットメントの紛失や破損があった場合は、修理や作り直しが必要になるため、再作製の費用がかかるのが一般的です。人工歯は10万円以上、アバットメントは5万円以上の費用がかかります。なお、修理や再作製の場合も、保証期間内であれば費用は少なくて済むでしょう。
そのほか、埋め込んでいるインプラント体が取れたり破損があったりしたときは、再手術が必要なケースがほとんどです。特にインプラント周囲炎で取れた場合、細菌を完全に除去することが困難なため、インプラント体の再利用はできません。そのため、新しいインプラント体を使って再手術する必要があります。
再固定が可能であれば、比較的費用をかけずに済みますが、再手術の場合、最初にインプラント手術を受けた時と同様、またはそれ以上の費用がかかる可能性もあります。また、骨量が多いか少ないかなど、歯周組織の状態によっても治療費は変わってきます。
具体的な費用については、インプラント治療を受けた歯科医院に相談しましょう。
インプラントの作り直しは保険適用されるのか
インプラントの作り直しに関して、保険の適用は一般的に難しいとされています。これはインプラント治療が保険適用外の自由診療で行われることが多いためです。
しかしながら、インプラント周囲炎など保険診療の適応範囲に入る場合や、一部の条件を満たした再治療においては、保険適用が認められることもあります。ただし、これには厳しい条件があるため、歯科医師への相談が不可欠です。
また、歯科医院によっては分割払いや治療費用のサポート制度を設けている場合もあるため、詳細は直接歯科医院に聞いてみましょう。
「インプラントが取れた(取れる)」ことに関するよくある質問
最後に、「インプラントが取れた(取れる)」ことに関するよくある質問にお答えしていきます。
インプラントが取れそう、グラグラするときはどうしたらいい?
インプラントがグラグラして取れそうなときは、早めに歯科医院を受診し、適切な処置を受けましょう。患者様ご自身での対処は不可能です。
アバットメントの緩みの場合はネジを締め直す、インプラント体と顎の骨が結合していない場合は再手術するなど、原因によって治療法は異なります。
早期治療によってインプラントの寿命を延ばすことができるため、異変を感じたら迷わず相談しましょう。
インプラントのネジ穴の蓋(アクセスホール)が取れた場合はどうする?
アクセスホールとは、人工歯に空いたネジ穴のことです。アバットメントと歯茎に埋まっているインプラント体をネジでつなげるためのもので、その穴は「レジン」という歯科用のプラスチックで埋められるのが一般的です。
レジンはプラスチック製であるため、経年劣化もあり、時間が経て取れてしまうこともあります。蓋がない状態で放置すると、食べ物のカスがネジ穴に詰まることもあるため、できれば早めに歯科医院で蓋をしてもらいましょう。
インプラントが取れたら違う歯医者で診てもらえるのか?
インプラントが取れた場合、いつも通っている歯医者とは別の歯医者でも治療は受けられますが、患者様のデータがなく口腔内の状況が不明なため、検査に時間がかかる場合があります。
また、歯医者によって使っている機材や扱うインプラントが違う場合もあるため、緊急時以外はおすすめできません。できる限り、インプラント治療を受けた歯医者で治療を受けるようにしましょう。
インプラントのメンテナンスは他院でも可能?
治療を受けた歯科医院とは違う歯科医院(他院)でメンテナンスを受けることは可能です。ただし、引越しなどの何らかの理由で通院できなくなった場合でも、できれば治療を受けた歯科医院への通院をおすすめします。
というのも、やはり治療をした歯科医師が最も患者様の口腔内の状態や行った治療を理解しているはずだからです。
また、インプラント治療は行っているものの、他院で埋入したインプラントのメンテナンスは対応しないという歯科医院も少なくありません。特にインプラントの再治療は通常のインプラント治療よりも難度が上がるため、どこの歯科医院でもできるわけではないのです。
そのほか、歯科医院によって使用しているインプラントの種類は違います。そのため、「同じインプラントのみ受け入れる」など、インプラントの種類によって対応可否が変わることもあるということを覚えておきましょう。
インプラントが取れたら早めに高田歯科クリニックへ!
インプラント治療後、何事もなく過ごせるのが一番ですが、生活をしていると何らかの原因でインプラントパーツの緩みや外れ、破損が起きることもゼロではありません。
そのまま放置しても元に戻ることはありませんし、患部にさらなる重大なトラブルを招いてしまう危険もあります。
取れたインプラントを正しく保管し、できる限り早く歯科医院へ相談・受診するのが最良の選択です。インプラントが取れてしまった場合や、
気になることがあれば、杉並区荻窪にある当院「高田歯科クリニック」へご相談ください。
また、インプラントを長持ちさせるためのメンテナンスもぜひお任せください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2024年4月3日