全部の歯をインプラントにできる?その方法や費用を解説
全部の歯をインプラントにできる?その方法や費用を解説
全部の歯を失った場合、様々な治療法が存在します。治療法の中で自分には何が最善なのかを見極める必要がありますが、その治療の一つにインプラントがあります。
インプラントは失った歯の部分にインプラント体(人工歯根)を埋め込み、その上から人工歯を被せる外科手術を伴う治療ですが、そもそも全部の歯をインプラントにできるのでしょうか。
本記事ではその疑問にお答えするとともに、治療する場合の方法や費用、メリット・デメリットなどについても他の治療法と比較しながら解説していきます。
-この記事でわかること-
- 全部の歯をインプラントにすることはできる
- 全部の歯をインプラントにする主な治療法は3つ(①インプラントオーバーデンチャー ②オールオン4/オールオン6 ③インプラントブリッジ)
- 費用は治療法によっても異なるが、①50~150万円程度 ②200~500万円程度 ③100~150万円程度
- メリット・デメリットを考慮した治療法の選択が重要
全部の歯をインプラントにする目的
歯は食事をしたり、会話をしたりするためにはなくてはならない体の一部です。だからこそ、全ての歯を失ってしまうことは日常生活に大きな影響を与えます。
まずは全部の歯をインプラントにする目的やインプラントの役割、私たちの身体や生活にどう影響してくるのかを詳しくみていきましょう。
失った歯を補う
歯を失う原因としては、虫歯や歯周病、怪我や不慮の事故などが挙げられますが、インプラントはその失った歯を補う目的で選択される治療法です。
歯根の役目を果たすインプラント体を顎の骨に埋め込むため安定性に優れているほか、入れ歯やブリッジと比べて天然歯に近い状態にまで回復することができます。
審美性を高める
インプラントに使用される被せ物の素材には、セラミックやジルコニアなどが一般的で、天然歯とほとんど変わらない透明感や色味が特徴です。これにより審美性・見た目の良さを高めるためにもインプラントが用いられます。
入れ歯や差し歯の場合、金属のバネが見えたり、経年劣化によって色味が変わったりと見た目が不自然になることがありますが、インプラントは笑ったり、話したりするときも自信を持って歯を見せられるほど審美性に優れています。
総入れ歯が合わずに替える
総入れ歯の方の中には、「外れたりズレたりして食事や会話がしづらい」「思うように噛めない」「歯茎に当って痛い」など、不具合を訴える方も多くいらっしゃるようです。
また、顎の骨が痩せたり、入れ歯がすり減ったりすることで今まで使用していた入れ歯が合わなくなることも。
自分に合っていない入れ歯をそのまま使用することによって、ストレスを感じることはもちろん、顎や身体への負担につながることも考えられます。これらの改善を目的として代替え治療としてインプラントが選ばれるケースもあるのです。
全部の歯をインプラントにする治療方法
全部の歯をインプラントにする場合、数本埋入するインプラント治療と何が違うのでしょうか。その治療法について詳しく説明いたします。一般的な治療法は下記の3つです。
- インプラントオーバーデンチャー
- オールオン4/オールオン6
- インプラントブリッジ
それぞれ一つずつみていきましょう。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーとは、インプラントと入れ歯を組み合わせた取り外し式の装置です。
治療法としては、2~4本のインプラント体を顎の骨に埋め込み、そのインプラント体を土台として入れ歯を支える仕組みになっており、入れ歯に取り付けた磁石で安定性を保ちます。
インプラントオーバーデンチャーの特徴・メリット
インプラントオーバーデンチャーは、インプラントを埋め込み、それを土台として利用することによって安定性が保たれる、かつ、取り外しも可能というインプラントと入れ歯のそれぞれの良さを兼ね備えていることが特徴の一つです。
そのため、通常の入れ歯で感じていた「会話や食事のしづらさ」「入れ歯を装着した時の違和感」を軽減することができるのです。
さらに、取り外し可能なため、手軽にお手入れができ、口腔内や入れ歯の衛生面を保てることもメリットと言えるでしょう。
オールオン4/オールオン6
オールオン4/オールオン6とは、4~6本のインプラントによって連結した12本の人工歯を支える治療法のことを言います。
通常のインプラントでは、失った歯の本数分のインプラント体を顎の骨に埋め込む必要がありますが、オールオン4/オールオン6の場合、最低限の本数で全ての歯を補うことができます。
オールオン4/オールオン6の特徴・メリット
通常のインプラント治療は、埋入する箇所の骨の量が十分あることが条件の一つです。しかし、オールオン4/オールオン6は限られた本数のインプラントを骨の丈夫な部分を狙って埋入するため、骨造成(骨を増やす手術)が不要なのが特徴です。
また、最小限のインプラント埋入手術で終わるため、患者様への身体的負担を軽減でき、手術回数や治療期間についても短く済ますことも可能。さらに手術後はすぐに仮歯を装着できるため、見た目が気になる心配もありません。
加えて装着した上部構造(被せ物)は取り外す必要がないため安定感が増し、入れ歯のような違和感や煩わしさを軽減できるのもメリットの一つです。
インプラントブリッジ
インプラントブリッジとは、インプラントとブリッジを併用した治療のことを言います。本来ブリッジは失った歯の両隣の歯を土台として利用し、連結した歯を被せる治療です。
しかし、例えば3本連なって欠損している場合には両端の部分にインプラントを埋入し、連結した3本の歯を被せます。
インプラントブリッジの特徴・メリット
基本的にインプラントブリッジは、1~2本連続して歯を失った時や3本連続して歯を失った場合に適用されることがあります。
インプラントブリッジにすることで、インプラントを埋入する本数を最小限にすることができるため、外科手術をすることでの身体への負担や治療費を軽減することがメリットです。
全部の歯をインプラントにする際の費用相場
全部の歯をインプラントにする場合、費用は治療方法によって異なります。治療法別に費用相場をご紹介します。
インプラントオーバーデンチャーの費用
インプラントオーバーデンチャーは保険適用外のため、全額自己負担となります。
埋入するインプラントの本数によって、また歯科医院によって設定の金額が異なるため費用は前後しますが、50~150万円程度が費用相場です。
オールオン4/オールオン6の費用
オールオン4/オールオン6もインプラントオーバーデンチャーと同様、保険適用外のため全額自己負担となります。オールオン4とオールオン6は、埋入するインプラントの本数が異なります。
歯科医院によって費用は異なりますが、オールオン4は片顎200万円程度。全顎の場合は400万円程度が相場と言えるでしょう。
また、オールオン6の場合は、片顎250万円、全顎500万円程度が費用相場となります。ただし、インプラントを埋入する本数や患者様の口腔内や治療計画によって費用は大きく異なるため、事前に歯科医院へ確認するのが安心です。
インプラントブリッジの費用
インプラントブリッジの場合も保険適用外のため費用が高額になります。3本連続して失った歯を補う際にインプラントブリッジを行う場合、インプラント2本分の手術費が必要となります。費用相場としては80~100万円程度です。
また、インプラント2本分の手術費だけではなく、その上に被せる義歯の費用もかかるため総額100万~150万程度はかかるでしょう。
なお、インプラントブリッジは適用できる対象が限られているため、まずは歯科医院へ相談しましょう。
全部の歯をインプラントにするメリット
インプラントには、審美性が優れている、噛み心地が安定しているなど様々なメリットがあり、全部の歯をインプラントにする場合も同様です。
ここから、具体的にどのようなメリットが存在するのかを他治療法とも比較しながら詳しく紹介していきます。
審美性を高められる
保険の入れ歯は歯科用のプラスチックで作られているため、長年使用を続けていると劣化することにより変色が起こります。一方、インプラントの上部構造(人工歯)にはセラミックを使用することが多く、天然歯とほとんど変わらない透明感や美しさを追求できます。
また、顎の骨に埋入されたインプラント体と上部構造を一体化させるような仕組みのため、通常の入れ歯と比べて見た目が自然で、美しく若々しい口元を保つことができるのもメリットです。
天然歯に近い噛み心地を得られる
インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上から人工歯を装着する治療法です。人工歯根と顎の骨が結合することにより、安定感が生まれ、天然歯に近い噛み心地まで回復できます。
総入れ歯での噛む力は天然歯が100%だとすると約20%程度。硬いものは噛むことが難しく、思うように食事をすることができなくなります。それに比べてインプラントは総入れ歯で感じていた不便さを払拭でき、今まで通りの食事を楽しむことができるでしょう。
顎骨が痩せてしまうのを予防できる
顎の骨は噛む刺激が伝わらないと骨吸収が進み、顎の骨がどんどん痩せていってしまいます。総入れ歯の場合は歯茎の上に乗せているだけのような状態となるため、そのような事態に陥りやすく、顎骨が痩せてしまうのを免れません。
しかし、インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込んでいることにより、噛んだ時に顎骨に刺激が伝わり、顎骨が痩せてしまうのを予防できます。
ズレずに安定し、違和感なく食事や会話ができる
入れ歯の場合、食事や会話の際に外れたり、ズレるといった状況になったり、装着した時の違和感によって入れ歯をつけなくなったりしたという患者様も多くいらっしゃるのが現状です。
さらには、入れ歯が歯茎に当たり擦れてしまうことで痛みを感じたり、口内炎ができてしまったりする方もいます。
一方、インプラントは顎の骨にインプラント体を埋入し、顎骨と結合されることによって安定性が保たれるため、装着した時のズレや違和感の心配がなくなります。これにより、これまで通りの食事や会話を楽しむことができるでしょう。
消化器官への負担を抑えられる、健康を維持できる
入れ歯の場合、天然歯と比べて噛む力が格段に弱まることにより、食べ物を細かく噛み砕いたり、すり潰すことがしづらくなります。しっかり咀嚼できないままだと消化不良を起こし、胃腸に負担がかかってしまいます。
一方インプラントは噛む力が確保できるため、食べ物の消化がスムーズに行われ、健康の維持にもつながります。
虫歯になる心配がない
インプラントは人工歯のため、虫歯になる心配がありません。虫歯はエナメル質が酸によって溶かされることによって発生します。
しかしインプラントに使用される人工歯はセラミックやジルコニア、金属でできているため、虫歯菌によって悪影響が及ぶことがないのです。
全部の歯をインプラントにするデメリット
全部の歯をインプラントにする場合、以下のようなデメリットも存在します。デメリットも考慮したうえで治療を検討しましょう。
対応可能な歯科医院が限られている
インプラント治療を行っている歯科医院は多数存在しますが、全部の歯をインプラントにするインプラントオーバーデンチャーやオールオン4/オールオン6に対応している歯科医院は限られています。
そのため、全ての歯をインプラント治療にしたいと考えている場合は、検討している歯科医院がその治療に対応しているかどうかを確認しておく必要があるでしょう。
場合によっては、自宅から遠い歯科医院に通わなければいけないかもしれません。時間がかかることや通う回数など負担になることも考えられるため、その点も考慮した歯科医院選びが重要です。
そもそもインプラントで治療できない場合も
インプラント治療を受けたくても、口腔内や全身状態によっては治療が難しいケースがあります。例えば、顎の骨の量が少ない方、糖尿病、高血圧、心疾患、骨粗しょう症など全身疾患を患っている方が挙げられます。
ただし、上記に当てはまるからといって必ずしも治療ができないというわけではありません。顎の骨が少ない場合は、骨造成(骨を増やす手術)を行うことで治療が可能になるケースがほとんどですし、全身疾患の状態やかかりつけ医との連携を図ることで問題なく治療を行うことができる場合があります。
安心して治療を受けるためにも、まずは歯科医師とかかりつけ医と相談しましょう。
外科手術が必要で身体的負担がある
インプラント治療は歯茎を切開し、顎の骨にインプラントを埋入する外科手術を伴います。
インプラントを1本埋入する場合、約30分程度と比較的短い時間で治療が可能ですが、全部の歯をインプラントにする場合には複数本インプラントを埋入する必要があるため、その分時間もかかってしまいます。
そのため、高齢者の方や全身疾患をお持ちの方、健康状態に不安がある方などは、身体的負担がかかりやすくなるでしょう。
治療にかかる費用が高額になりがち
入れ歯は保険適用のため、安価に済ませることができますが、インプラント治療は自費診療のため、費用が高くなりがちです。一般的にはインプラント1本あたり30~45万円程度が費用相場であり、複数本埋入が必要となるとそれだけ高額になることが予想されます。
料金設定については歯科医院によってそれぞれ異なるため、事前に歯科医院へ確認しましょう。なるべく費用を抑えたい場合には、医療費控除を活用するのもおすすめです。
インプラント周囲炎のリスクが高まる
インプラントは人工歯のため、虫歯になる心配はありませんが、インプラント周囲炎になるリスクが高いと言われています。インプラントは周囲の組織への血液供給が上手くできないことで抵抗力が弱まり、細菌感染を起こしやすくなるのです。
特に全部の歯をインプラントにする場合、インプラント1本を埋入したときよりもそのリスクは高くなることが考えられるでしょう。インプラント周囲炎を予防するためには日頃から定期的なメンテナンスに通い、丁寧なセルフケアを心掛けることが欠かせません。
全部の歯をインプラントにするのが向いている人
歯を全部失っているからといって、全ての人にインプラントが向いているとは言い切れません。
全部の歯をインプラントにするのがおすすめな方は、以下の通りです。
若くしてほとんどの歯を失った人
20代~50代ぐらいの若い年代の方でほとんどの歯を失った場合は、顎の骨がまだ確保できていることが多いでしょう。また、今後その顎の骨が痩せていってしまうのを予防するためにも、顎骨に刺激が伝わるインプラント治療がおすすめです。
顎の骨が痩せてしまった後にインプラント治療を行う場合は、骨を増やす別の治療が追加で必要になるため、若いうちから検討する必要があります。
総入れ歯が合わずに困っている人
これまで総入れ歯を使用してきて、食事や会話のしづらさを感じている人や、歯茎に当たることでの痛み、装着した時の違和感などで困っている人は、インプラントに変えることがおすすめです。
上記のような煩わしさや違和感を改善でき、天然歯とほとんど変わらない状態まで回復できる可能性が高いからです。
総入れ歯が合わずに困っている人は、一度インプラント治療を検討されるのも良いでしょう。
「全部 インプラント」に関するよくある質問
最後に、「全部 インプラント」に関するよくある質問にお答えしていきます。
全ての歯をインプラントにするといくらになりますか?
全ての歯をインプラントにする治療法には、インプラントオーバーデンチャー、オールオン4/オールオン6があり、それぞれの治療法によって料金は大きく異なります。
インプラントを埋入する本数によっても前後しますが、費用相場としては以下の通りです。
- インプラントオーバーデンチャー…50~150万円程度
- オールオン4/オールオン6…200~500万円程度
- インプラントブリッジ…100~150万円程度
インプラントは全部で何本までできますか?
インプラントの埋入本数は、患者様の口腔内や骨の量、全身状態などによって異なりますが、全部の歯を失っている場合、最大で20本程度の治療が可能です。
しかし、ほとんどの歯科医院では最大本数のインプラントを埋入することは少なく、最小限の本数のインプラントを土台として利用し、その上に連結した歯を装着する治療法となることが多いでしょう。
まずはインプラントの治療法や埋入する本数について歯科医師と相談のうえ、負担にならないような治療を進めていきましょう。
歯が全部なくなったらどうしたらいいですか?
歯を全て失った場合の治療法には、総入れ歯とインプラント治療があります。総入れ歯は保険内で外科手術なども必要なく治療ができますが、食事や会話の不便さや装着した時の違和感などが多く、合わないと感じてしまう方が正直なところです。
インプラント治療は、天然歯とほとんど変わらない審美性や機能性にまで回復できるところが大きな魅力であり、インプラントを選ぶ方も増えてきました。しかし、外科手術が必要、治療が高額になることがデメリットとして挙げられます。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に合った治療法を見つけましょう。
全部の歯のインプラント治療を検討中なら、まずは歯科医院へご相談!
全部の歯をインプラントにすることは、食事や会話を楽しむことができたり、天然歯とほとんど変わらない噛み心地を感じることができたりと、これまでの日常生活を快適に過ごすための選択肢の一つと言えます。
ただし、患者様の口腔内や全身状態によってはインプラントよりも総入れ歯の方が合っている場合、またインプラント治療がデメリットになることも考えられることも理解しておかなければなりません。
全部の歯をインプラントにしようと検討している方は、それぞれのメリット・デメリットを考慮し、自分にとってどの治療法が最適なのかを歯科医院へ相談のうえ判断することが大切です。
全部の歯をインプラントにしたいと検討中の方、どの治療法がいいのか分からないと迷っている方は、ぜひ一度当院「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」へご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2024年12月2日