10年後の前歯のインプラントはどうなる?長く付き合うためにできること
インプラントの耐久性は高いとはいえ、寿命を迎えてしまえば別のインプラントへ交換する必要があります。それはインプラントを埋め込んだ部分や本数に限らず同じこと。5年後、10年後にどうなってしまうのか気になる患者様も多いようです。特に前歯のインプラントの寿命に関心が高い患者様が多い傾向にあります。
本記事では、前歯のインプラントの寿命とその根拠、前歯でインプラント治療を採用する理由について解説します。
1.インプラントの寿命は10年前後
インプラントの寿命は、使用するインプラントによりますが10年といわれています。しかし、使い方やケア方法、メンテナンス次第では15年、20年と使えるインプラントもあるのです。定期的な交換が原則必要がないインプラントは、基本的に10年以上は使えると思っていいでしょう。ただし、個体差もあり、使用条件にもよることを念頭に置いておかなければなりません。
1-1.メーカーの保証期間も10年がほとんど
インプラントにはメーカー保証が設けられています。保証期間内に、患者様による過失でインプラントに問題が発生した場合を除き、無料で新しいインプラントに交換できる保証のことです。インプラントは人工物ですが、特に歯の部分である上部構造はセラミックで徐々に劣化をしていきます。しかし、インプラントメーカー各社の研究・開発が進んだ結果、現在では10年も耐用年数が伸びるまでになりました。
使用している素材によって異なるものの、インプラントの保証期間は、耐用年数である10年と連動していることがほとんどです。つまり、10年間で術後のインプラントに不具合が発生した場合は、無料で交換してもらえるようになっているのです。ただし、手入れをきちんとしていなかったり、無理に力を入れて脱落させていしまった場合は保証の対象になりません。保証の適用要件をよく確認しておきましょう。
1-2.メンテナンス次第では10年以上持つ
インプラント治療後は、年に2回の定期メンテナンスを推奨しています。インプラントは埋入したら半永久的に使えるわけではありません。患者様自身の日常的なケアも大事ですが、同時に歯科医師によるメンテナンスも、インプラントの寿命を大きく左右します。人工物なので虫歯をはじめとする病気にこそならないものの、その周囲は感染症や虫歯になってしまいます。周囲の歯や歯茎に異常が見られれれば、最悪の場合、インプラントの脱落にもつながってしまうのです。そのため、インプラント埋入後もメンテナンスが重要になります。
歯科医師による高度なチェックやお掃除で、日常的なケアだけではどうしても行き届かない場所の状態も確認してもらえます。また、異常があればすぐに処置してもらうこともできるのです。細かなことかもしれませんが、メンテナンスをきちんと受けることで、インプラントの寿命は10年を超えることも少なくありません。
1-3.最長で40年以上持った例も
結論から言えば、インプラントは日頃のケアと定期的なメンテナンスができていれば、半永久的に使えることが分かっています。残されている記録の中でもっとも長く使われたインプラントは、インプラント治療を最初に行った患者様です。その患者様はすでに亡くなられていますが、インプラントは治療後から亡くなるまでの40年以上、大切に使われ続けたのです。この記録は、インプラントが半永久的に使える証拠でもあり、インプラントの信頼性が証明された出来事でもあります。
実際に同じインプラントを40年以上使用するとなると、日頃のケアやメンテナンスは必須です。逆に言えば歯科医師の指導に従えば、長期の使用もできます。インプラントの寿命に関してはこちらの記事でも解説しています。
2.前歯のインプラントが他よりも難しい理由
前歯のインプラントは、奥歯などの他の部分に比べて難しいと言われています。その代表的な理由が次のふたつです。
- 上顎の骨が薄いため
- 前の歯茎が痩せやすいため
前歯のインプラントが難しいと理解したうえで、治療計画を立てる必要があります。
2-1.上顎の骨が薄いため
インプラントの土台であるインプラント体は、顎の骨に直接埋め込みます。埋め込むためには、インプラント体に合わせた穴を上顎に空ける必要があります。しかし奥歯に比べ前歯付近の顎の骨は薄いため、インプラントを埋入するために必要な厚さが不足する場合も。
さらに歯を失ったのちの期間が長いと、時間の経過とともに骨が吸収(歯槽骨の吸収)されて、より薄くなってしまいます。そのような場合、骨の厚みを人工的に増やす骨再生治療が必要です。
2-2.前の歯茎が痩せやすいため
歯茎は、年齢とともに痩せやすく下がりやすい傾向があります。痩せた歯茎では施術が難しいのはもちろんのこと、施術後にインプラントの一部が透けて見える可能性も。
口を開けるごとに見える前歯は、審美性の高さが重要です。下がった歯茎とインプラントの間に見える接合部分は通常金属ですが、セラミックにするなど見た目にこだわる必要があります。
前歯のインプラントに関して、こちらの記事でも詳しく解説しています。
3.前歯のインプラントの寿命は?
インプラントの一般的な寿命は10年前後、メンテナンス次第でさらに伸びることが分かりました。では、前歯のインプラントはどれくらいの期間持つのでしょうか。前歯と奥歯では、役割が異なるため寿命に違いがあると思っている患者様もいます。しかし、実は決してそんなことはなく、ケアや手入れ次第で長く付き合えるのです。
3-1.原則奥歯のインプラントと同じ
前歯のインプラントの寿命は奥歯と変わりません。メーカーの保証期間は10年前後になり、メンテナンス次第では20年以上同じインプラントを使い続けている患者様もいます。埋入する場所によって寿命が変わることはないということです。
そもそも、インプラントの本体にあたるインプラント体に前歯用・奥歯用があるわけではありません。どの部分でも埋入できるように設計されています。違いは実際に露出している上部構造の形だけであり、その他の部分で違いはほぼありません。
ただし、もともとの顎の骨の厚みの違いから、前歯のインプラントのほうがやや予後が悪いとされているのは事実です。前歯のインプラントに関しては、奥歯の治療に比べるとより高度な治療でもあるので、信頼できる歯科医師を探すといいでしょう。
3-2.術後の生活習慣や病気によって異なる
前歯と奥歯のインプラントに、基本的な違いはありません。いかに予後があまりよくないとはいえ、きちんとしたケアやメンテナンスができていれば、末永く使え得ることに変わりはないのです。
しかし、術後の生活習慣や病気によっては、インプラントの寿命が短くなってしまうこともあります。代表的なものが喫煙習慣です。タバコを吸っている患者様のインプラントと、吸わない患者様のインプラントの耐用年数を比較すると、喫煙習慣のあるほうが寿命が短いと言われています。喫煙によって虫歯になりやすくなるだけではなく、歯茎下がりが起きやすかったり歯周病になりやすかったりします。術前・術後あわせて、インプラント治療を希望される方はまず禁煙から取り組んでみましょう。
3-3.術前の状態でも寿命が違う
同時に、術前の状態によってもインプラントの寿命は変わってしまいます。例えば、事故で前歯を折ってしまった患者様と、重度の歯周病で歯を失った患者様では、後者の方がインプラントの寿命が短い傾向にあります。また、そもそも重度の歯周病の場合はインプラント治療そのものを断られることも珍しくありません。
さらに言えば糖尿病や心臓病を患っている場合も、短期間でインプラントが使用できなくなることもあるのです。持病を抱えている場合はインプラント治療の前に、持病の治療が進められます。治療に従っていればインプラント治療ができる場合もありますが、予後のことを考えて断られることも。事前に問い合わせて見ることをおすすめします。
4.前歯のインプラントを長持ちさせるコツ
前述でも解説しましたが、インプラントの寿命にはさまざまな要素がかかわってきます。維持できなくなったインプラントは、再び施術し直す必要があります。しかし金銭面だけでなく身体的負担や手間の面からも、1年でも長持ちさせたいところです。
インプラントを長持ちさせるコツは次の4つです。これらのコツは、前歯に限らず他のインプラントにも共通します。
- 定期的なメンテナンス
- 毎日のケア
- 禁煙もしくは本数を減らす
- 歯ぎしりや食いしばり対策
大切にケアすることでインプラントの寿命を長引かせられます。
4-1:定期的な検診やメンテナンス
インプラント自体は無事でも、インプラント周辺の歯や歯茎が原因で10年持たないことがあります。特にインプラント周辺は、歯周病や歯肉炎に気付きにくい部分です。
しかしインプラントには神経がないため、痛みを感じにくく、気付かないうちに炎症が進行してしまいます。土台となる歯茎のトラブルを早期発見するために、定期的な検診やメンテナンスが大切です。
4-2:毎日のケア
インプラントは虫歯や歯肉炎になりませんが、インプラントの周辺は炎症を起こす可能性があります。歯周病などが原因で、インプラントを支えている歯槽骨が溶けてしまうと、インプラントの抜け落ちや撤去につながるのです。
またインプラント周囲の歯が虫歯や歯肉炎で使えなくなると、インプラントに大きな負荷がかかります。前歯や前歯周辺の歯肉が下がりやすいことからも、毎日のブラッシングやフロスなどで、健康的な状態を保つようにしましょう。
4-3:禁煙もしくは本数を減らす
喫煙によってインプラントの成功率はもちろんのこと寿命が短くなるといわれています。その原因は次のとおりです。
- ニコチンによる血流阻害
- 一酸化炭素による酸素供給阻害
- 白血球の活動抑制
- 唾液の減少
どれも歯茎や歯肉にとって悪影響であり、感染症も起きやすくなります。またタールがインプラントに付着し、見た目も悪くなります。インプラントの寿命を少しでも伸ばしたいのであれば、禁煙もしくは喫煙を極力控えた方がいいでしょう。
4-4:歯ぎしりや食いしばり対策
歯ぎしりや食いしばりは、自分の体重の2~5倍の負荷を歯に与えます。インプラントは、自然の歯よりも衝撃に弱く、歯ぎしりや食いしばりによって部品の破損や周辺の歯周炎ににつながります。対策方法としては次のふたつです。
- ナイトガード
- ボトックス注射
寝ている間の歯ぎしりから歯を守るナイトガードは、インプラント以外の歯も守ってくれます。筋肉の弛緩効果があるボトックス注射は、美容整形ではしわに効果があるメジャーな治療です。歯科治療においては食いしばりに効果があり、約4~6ヶ月ほど持続します。
5.前歯の治療で使えるインプラント以外の選択肢
前歯の治療では、インプラント以外の選択肢もあります。インプラントでは奥歯と同じように10年後も残っているイメージが付かない場合などは、こちらを選択する患者様も一定数います。また、予算的な都合で断念せざるを得ないケースもありますが、インプラントとは違うメリット・デメリットがあることも覚えておきましょう。
5-1.ブリッジ
ブリッジとは、抜け落ちた歯とその両隣にある歯に被せ物をして、脱落した歯の代替をさせるための治療法です。上部構造の素材を選ばなければ原則保険適用内での治療が可能で、費用負担が少ないという特徴があります。
支柱役となる両端の歯をある程度削って形を整え、その上からブリッジを被せます。2本の歯に支えられることになるので噛む力は強く、大きな負荷をかけなければ自然歯同様の使い方ができると考えていいでしょう。
ただし、ブリッジはこの支柱となる2本の歯を削ってしまうことが最大のデメリットでもあります。両サイドの歯が何の不調がなくても行わなければならないため、必然的に健康な歯を傷つけることになってしまいます。また、それによって削られた歯は虫歯になりやすくなるのもデメリットです。加えて、ブリッジの寿命は平均して8年と言われており、都度交換が必要です。インプラントのように1回の治療で半永久的に使えるわけではないことを覚えてきましょう。
5-2.入れ歯
もうひとつの選択肢に入れ歯があります。前歯だけの場合は部分入れ歯になり、歯全体を入れ歯にする場合は総入れ歯となります。ブリッジでは抜けている本数が補えない場合に採用される治療法で、着脱が簡単なため手入れが比較的簡単なのが特徴です。また、ブリッジ同様、原則保険適用内の治療でもあります。
デメリットとしては、ブリッジやインプラントに比べると圧倒的に噛み心地に違和感を感じる点です。入れ歯には取り付けの金具はついているものの、しっかりと固定されているわけではありません。そのため強い力をかけても入れ歯まで伝わりにくく、一部食べられなくなってしまう食べ物も出てきてしまうのです。また治療後の見栄えもよくはないため、前歯にだけ使用するのもあまりおすすめしていません。
使い勝手が悪いわけではないものの、利便性や審美性を考えるとブリッジやインプラントには大きく劣ってしまいます。性質上仕方がないことだと割り切ることが重要です。
6.前歯をインプラントにするメリット
一般的に、奥歯よりも予後がやや悪いと言われているインプラントですが、メンテナンスがしっかりできていれば、ブリッジや入れ歯よりもインプラントを強くおすすめします。予後に関しても「やや」悪いだけで、完全に不向きなわけではないからです。前歯をインプラントにするメリットは次のとおりです。
- 審美性が高い
- 発音がきれいにできる
- 食べ物を噛み切れる
6-1.審美性が高い
審美性の高さは、インプラント最大の特徴と言っても過言ではありません。ブリッジのように被せ物の境界線が見えてしまうこともありませんし、入れ歯のように金具が見えたりすることもありません。これら2つと違って完全に自立しているインプラントだからこそ得られるメリットといえます。
特に前歯は会話をしている人が見える部分です。境目や金具が見えてしまう恥ずかしさから、人前で口を開けて笑うことができない患者様も少なくありません。インプラントではその点、安心して歯を人前で見せることができるでしょう。上部構造も患者様の自然歯の色に合わせて作るので、1本だけ色が違うなどのこともありません。
この審美性の高さから、ご高齢の患者様がインプラント治療を希望されることもあります。実際に当院では80歳を超えてからインプラント治療をされた患者様もいらっしゃいます。気になる方はぜひ一度お問い合わせください。
6-2.発音がきれいにできる
特に入れ歯の場合に顕著に現れますが、発音しているときに空気が横から漏れてしまい、うまく発音できないことが増えます。中には、発音しにくくなってしまったことで、話をするのが億劫になってしまった患者様も。前歯は特に発音をするためには大事な部分です。これも、インプラントにすることで解決できる可能性が高くなります。
インプラントは、歯の根元が顎の骨に埋まっているため、力をこめて使用することができます。発音するときも、無意識ではありますが顎に力がこもり、空気が抜けてしまうのを防いでいるのです。顎の力が伝わりやすいインプラントならば、今まで億劫だった会話も楽しくできるようになるでしょう。
ブリッジは入れ歯よりはきれいに発音できますが、やはり顎から直接力が伝わっていないこともあって、インプラントほどではありません。インプラントにすることで、人とのおしゃべりも楽しめるようになるでしょう。
6-3.食べ物を噛み切れる
前歯の役割は食べ物を噛み千切ることにあります。普段食べているものにもよりますが、前歯に力がかかりにくいブリッジや入れ歯では、怖くて食べられない、噛んだら痛みを感じるなどの理由で固いものを食べない人も。顎の上に乗っているだけなので、痛みを感じても仕方ありません。
インプラントは顎の骨でしっかりと支えられているので、食べ物を噛み切るためにかかる顎の力を、しっかりと伝えることができます。食べられるものの範囲も広がり、食事がさらに楽しくなるでしょう。
ブリッジも、大きな力がかからなければ問題はないのですが、両隣の歯に支えられている関係でそれほど大きな力を加えることができません。インプラントも治療直後は制限がありますが、歯科医師の許可が出れば自然歯同様に使うことができるでしょう。
7.前歯のインプラント治療は実績のある歯科医院で
前歯のインプラント治療は、非常に難しいとされています。その理由は顎の骨の厚みです。奥歯に比べて前歯の顎の骨は薄く、治療に必要な厚みがない患者様も中にはいます。また、歯の役割の関係で奥歯よりも力がかかることを考えると、経験と知識に基づいた高度な治療が必要です。前歯のインプラント治療は、実績豊富な歯科医院に相談することがおすすめです。
当院では、年間850本のインプラント治療の実績があります。その中には当然前歯の治療もありますし、他院で断られた患者様もいます。10年後と言わず、20年、30年と長きにわたって使用できるインプラント治療とメンテナンスを提供し続けている当院に、まずはお気軽にご相談ください。
8.手入れ次第で前歯のインプラントの10年後は違う
前歯のインプラントは、確かに奥歯よりも予後がよくないのは事実です。しかし、10年程度であればしっかりとしたケアや定期メンテナンスを心がけていれば、まず問題なく使える期間でしょう。10年後、20年後と長く使える前歯のインプラントは、色々な面で恩恵をもたらしてくれます。まずは相談だけでも結構ですので、一度当院までお問い合わせください。実績豊富な歯科医師が、親身に相談をお伺いします。
※本コラムはあくまで一般的な情報として説明しております。高田歯科ではコラム内容で触れてはおりますがあえて対応していない内容もございますが、ご来院いただく患者様に合わせて最適なインプラント提案をさせていただいておりますので、まずは相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2021年11月24日